「上田市に『キリン』のワイナリーができたらしいよ? 体験ツアーをやるみたいだから行ってきて。あ、ワイン、イケたっけ?」
そんな話をデスクからふられた記者。「赤はお肉、白は魚」「チーズや生ハム、フレンチ、イタリアン、スペイン料理などの洋食と飲むとおいしい」などと、ほわっとした知識しかないワイン素人だ。
当然、産地やブドウの種類、銘柄は知る由もなく、もうすぐ「ボジョレー解禁だね」なんて言いだすレベル。そもそも、「キリンのワイナリー? キリンはビールでしょ」と、国産ワインに覚えナシ。
とはいえ、仕事で堂々と飲めるのなら文句はない。東京駅から新幹線に乗って1時間半、のこのこと長野県上田市にやってきたのだった。
信州の広大な土地でブドウから栽培
上田駅からバスに揺られて約20分、到着したのは今秋にオープンした『シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー』。そう、昭和9年創業の老舗ワインメーカー『メルシャン』は、'06年にキリンと合併し、以後、同社のワイン事業を牽引しているのだ。
メインホールでさっそく、よ~く冷えたスパークリングワイン『椀子のあわ』(長野県限定)にウエルカムされる。この日、気温30℃の上田市。めっちゃおいしい。うん、これ(ツアー)はいいぞ!
「乾杯!」の音頭をとったのは、今回のツアーをガイドする、セラードア・マネージャーの山田基之さん。全身黒でキメた、おまけに肌もこんがり焼けた、昔なら“ちょいワル”と言われそうなオジサマ。
「この『椀子ヴィンヤード』の“椀子”という名前は、6世紀後半の欽明天皇の皇子“椀子皇子”からとっています。この上田市も、かつては丸子町だったのですが、“まりこちょう”と呼んでいました」(山田さん、以下同)
ワイナリーを360度囲むヴィンヤード(ブドウ畑)の敷地は、東京ドーム6個分の約30ヘクタール。16ブロックに分けて「メルロー」「シラー」「シャルドネ」など8種類を栽培している。畑に出ると、フランスで多く栽培されている「カベルネ・フラン」を試食させてもらった。
食用ブドウと大きく違うのは皮の厚さ。でも、皮の渋みとコク、実の甘さと酸味が相まって美味。もう、これを“あて”にワインを飲んでもいいのではなかろうか。期待値がググーンと高まる。