とはいえ、公園の改善はなかなか難しいもの。そこで、池谷会長がある提案をした。
「ご自宅の庭にカエルのお家を作りましょうと。すると、“素晴らしいわ”と賛成してくれたんです。そこで、私たちが八千草さんの庭全体をビオトープに作り替えました」
“ビオトープ”とは、その地域にもともと生息している野生の生き物たちが暮らしたり、利用したりする場所のこと。このおかげで、公園の池で卵を産んでいたカエルが八千草さんの庭にやってくるようになった。
「毎年、春になると“カエルの卵が無事に育っています”とうれしそうに報告してくれていました。こんな女優さんがいるんだとビックリしました」
とってもお似合いだからよかったら着てください
やさしさは、最後のメッセージが記された書籍『まあまあふうふう。』(主婦と生活社刊)の担当編集にも注がれていた。'18年10月、同書の撮影で長野県の八ヶ岳高原にある八千草さんの山荘へ行ったときのこと。
「山荘は、高原の中でも標高の高い場所にあるので、高原の入り口よりもずっと気温が低いんです。ところが僕が油断して、薄手のジャケットだけしか持っていかなかった。日が暮れてきたら、ぐんぐん寒くなってきて。
すると八千草さんが“それじゃあ寒いでしょう? これ、山小屋にずっと置いてあったものだけれどよかったらどうぞ”と、鮮やかなグリーンのマウンテンパーカを貸してくださったんです。それで、ありがたくお借りしました」(担当編集、以下同)
無事に撮影を終えて、パーカを返そうとすると、
「“明日も撮影でしょう? 山は朝も冷えるから、それ着ていらしたら? 差し上げますから”とおっしゃられて。聞けば、そのマウンテンパーカは亡くなられたご主人のものだったそうです。“主人のお古で悪いですけれど、アメリカのもので丈夫だし、ほとんど着ないままだったから”とニコニコされていて。
そんな大切な思い出の品なら、ますます受け取れないのでお返ししようと慌てて脱いだのですが、“いいのいいの。とってもお似合いだからよかったら着てください。服だってずっと置きっぱなしにされるより、誰かに着てもらえたほうが幸せでしょう?”と、言っていただきました」