病気の末になってしまった頭を“ハゲ”と称し、自らをギャグマンガのモデルにした女性がいる。週刊女性の連載『トコちゃんとてるてる母さん』でおなじみ、小豆だるまさんだ。

“ハゲの女性”に周りはギョッとする

「重度の円形脱毛症からカツラ生活を始めて数年。最近は医療用カツラでもおしゃれなデザインのものが多く、日常生活は不自由なく過ごしていますが、女性のハゲは男性よりも深刻。だから、みんな必死になって隠すしカミングアウトなんてもってのほか。人に言ってはいけない病気だと思い込む人もいるくらいです。

 そのため、ハゲで悩む女性の認知度はとてつもなく低い。私はギャグ漫画家なので、まずはマンガで認知度を上げたいと思いました」

 近年ではFAGA(女性男性型脱毛症)という言葉も登場し、女性のハゲ問題はメディアでも話題にあがるようになった。さらに赤裸々に告白した小豆さんのエッセイマンガも影響し、ハゲ女性に対する関心も高まりつつある。しかし、小豆さんに言わせると“まだまだ”とのこと。

「ギャグマンガで描くハゲの私はコミカルだし、キャラクターとして親しみを持って受け入れてもらえますよね。じゃあ、リアルな“ハゲの女性”を目の当たりにすると人はどうなると思います? ギョッとするんですよ。それって、やっぱり見慣れてないからなんです

 現実のハゲ女性を受け入れてもらう方法に悩んでいたそのとき、以前から親しかった音楽ユニット『BOZE STYLE(ボウズスタイル)』が、ライブでハゲを優待する「ハゲ割」を導入した。

 通常、カツラでのライブ参戦やダンスなどの激しい運動は厳しい。カツラの内側は運動により熱くなり蒸れる。そして、いつ何どき“ズレるか”という恐怖がつきまとう。長年、趣味で続けていたダンスも諦めていた小豆さんだったが、

「“これならカツラ脱いでガンガン踊りまくれる!”と思って、カツラを脱いで参加しました。それが、めっちゃ気持ちよくて! この感動をまた体験したいと思って立ち上げたのが『ハゲプロ』なんです」

 小豆さんが主宰する『ハゲ100人で踊るプロジェクト』、略してハゲプロ。

 自らの実体験を多くの同朋に共感してもらいたい。そして、もうひとつの大きなテーマは“ハゲの認知度アップ”だ。

「このままだとハゲている人はずっと日陰者として生きていかなければならないし、社会の中で生きづらい。そんな現状を打破するには、“ハゲを抱えて生きている女性の認知度を上げて、個性として認めてもらうしかない!”って思ったんです。それも、消極的な姿勢じゃなく、ポジティブにハゲをアピールすることで、ハゲは初めて個性として認識されるんです

 よって、ハゲプロ内では“ハゲは宝”と崇められる。舞台のセンターが許されるのは、完全な無毛の立派なハゲの持ち主だけだという。

 自らのハゲさえ楽しんでしまうハゲプロの一員たち。だが、いつの時代も女性は見た目で判断される機会が多く、ハゲという特殊な存在を笑いに昇華させるには、相当の時間と覚悟が必要だったに違いない。

「私が円形脱毛を発症したのは30代。まだまだ女性として輝いている年代ですから相当落ち込みました。カツラをするときも“この人かぶってるのバレバレ”なんて後ろ指さされそうで、かなり葛藤しましたから。

 でも、“ハゲは悪いことじゃない”“コツコツ治療を続ければいいことだってある”と前向きな気持ちに前進することができたのは、親身になって治療に力を注いでくれた主治医の先生方のおかげ。この悩みをひとりで抱えていたら、いまもまだ悩み続けていたし、家族以外には一生、秘密にしていたかもしれません」