真っ当な人生を歩んできたがゆえにトーク番組で自分の生い立ちを面白おかしく話すことが苦手だったり、何事も器用にこなせる一方で組み立て式の棚に苦戦し未完成のまま放置したり、30歳でひとり暮らしを始めた家は墓地に隣接するメゾネットタイプだったり。
ハライチの岩井勇気さんが上梓した『僕の人生には事件が起きない』は、自身の日常を描いた初のエッセイ集だ。
書くのはほとんど締め切りの前日
そもそものきっかけは、『小説新潮』から依頼された1000文字ほどのエッセイだったという。
「僕はネタやツイッター以外の文章を書いたことがないですし、小説やエッセイといった活字も全然、読まないんです。それでも、なんとか依頼された原稿を書いて『小説新潮』に掲載されたのですが、“もうちょっとうまく書けたなぁ”という気持ちがありました。
だから、『エッセイの連載をやらせてもらってもいいですか?』って自分から提案したんです。最初に先方からオファーをいただいていたこともあり、担当編集者の厚意につけ込みました(笑)」
岩井さんはもともと、どんな事柄でもコツをつかむのが早いタイプなのだそうだ。そのため、さほどの苦労なく連載に取りかかれたという。
「コツをつかむまでに3本くらい原稿を書きました。その3本はボツになったのですが、4本目は納得がいくものが書きあがり、その時点から掲載となりました。書くのはほとんど締め切りの前日。3時間程度で書けることもあれば、6時間くらいかかることもあります」