ギャラがいくらなのかを確認しないまま、何度もスタッフと打ち合わせを重ねました。そしたら、撮影前日に日テレの経理から電話があり、“明日のギャラは1万円だ”と言うんです。“終日撮影で1万円なんて冗談じゃない!”と言うと、“では2万円にします”と言われて

 金額的に納得していなかった桐谷さんは“明日来ても帰ってもらいますから!”と伝えたという。すると翌日に、

チャイムが鳴って玄関に行くと、菓子折りと現金10万円を持ったスタッフがいて“これでお願いします~”と、深々と頭を下げるんです。1万円が10万円になったら、ヤル気が出ましたね(笑)

 彼の独特なキャラクターと、60代とは思えない猛スピードで自転車をこぐ姿が話題に。

『夜ふかし』はこんなことを言い出してきたという。

“今後は他番組への出演はすべて禁止”と言われました。さらには、雑誌の取材を受けても“私と自転車が一緒に映った写真はダメ”とか。私の書籍が回収騒ぎになるほど、厳しかったんです

“ドジなシーン”以外は全カット

 すっかり人気者となった桐谷さんに、日本将棋連盟から“桐谷さんのうちわを作りたい”という依頼も来たが、

「せっかく言ってくれたけど、私と自転車が映っている写真が使えないとなると売れないから止めようと。そうしたら連盟の役員が“顔写真だけでもいいから作らせてほしい”と言ってきたんです。その心意気に感動して、『夜ふかし』とは絶交しようと。これが1回目ですね」

 すると、喫茶店で『夜ふかし』との話し合いが行われ、日本将棋連盟のイベントを『夜ふかし』で放送するということで手打ちに。だが、それでも規制は緩まなかった。

“講演会なら自転車に乗ってもいいですよね?”と聞くと、すぐに“ダメだ!”と返事が来ました。これでまた絶交しちゃいました

 再び、喫茶店で話し合いが行われた。

なぜ、そこまで規制されなければならないのかと聞くと、“メディアに消費されてしまう。桐谷さんには息の長い芸能人になってほしい”なんて言うんですよ。私は当時すでに63歳(笑)。別にずっと芸能界にいるつもりはないと伝えると、“まぁまぁ”と諭されましたけど

 絶交2回で規制はなくなったが、出演を重ねるたびに、スタッフへの不満が募っていった。

私がドジをしたシーンばかり放送するんですよ。壁をよじ登るスポーツ『ボルダリング』をやらされたことがあったんですけど、私はスイスイできちゃったんです。そしたらどんどん難易度の高いコースをやらされて……。でも、全部クリアしましたよ。ジムの人も“すごい、最年長記録ですよ!”って褒めてくれたんですけど、放送を見たら全カット。スタッフに詰め寄ったら“桐谷さんのドジなところを撮りたかった。だからボツです”と悪びれもせずに言われました

 例の自転車で颯爽と走るシーンにも不満がポロリ。

「スタッフらはロケバスに乗っていて、私は必死で自転車こいでるんです。それで、“ハイ、立ちこぎして!”とか指示を出してくる。彼らはバスの中でサンドイッチを食べてくつろいだりして、みんな遊んでるだけなんですよ!」