なんだっけ? 誰だっけ? 私、やばくないですか?
 長く生きているぶん記憶が膨大で、うまく引き出せないだけです。

映画のタイトルも俳優の名前も思い出せない

A.記憶のストックが増えたから、探し出せないだけ

 記憶した事柄は、ある一定期間、脳の取り出しやすい場所にありますが、時間がたつと重要度の低いものは記憶の奥のほうへと自動的に振り分けられます。だから、とっさに探せないだけです。

 映画評論家でもない限り、タイトルも俳優の名前もさして重要ではありませんから、思い出せなくてもいいのです。

悲しくもないのに涙が出てしまうのですが……

A.脳の問題よりは、「ドライアイ」を疑いましょう

 脳の問題の可能性は低いと思われます。まずは目を疑ってみてください。さて、ドライアイと聞くと、目が乾いていると思われがちですが、涙は十分作れているのに、すぐ失ってしまうために、ドライアイになっている人が圧倒的です。

 悲しくもないのに涙があふれてしまう人は、涙に油分が少なく、瞳に張りついていられない状態です。涙は目を守る大切な役割があるので、身体はどんどん涙を作りますが、作るそばから流れてしまう。だから目が乾くのです。

 予防の第一は目を温めること。蒸しタオルを目の上にのせるとか、手をこすって温めて、目の上に当てるだけでも涙の質を改善し、ドライアイを防ぐ効果があります。

 パソコンやスマホを使うときには意識してまばたきを。部屋の湿度を保つことも大切です。

くしゃみがおっさんぽくなった。女性ホルモン減少のせい?

A.トシのせいより、筋力の問題。マナーを守れば豪快に! が正解

 中年女性が豪快なくしゃみをする姿、病院の待合室でも結構見かけます。

 くしゃみは上半身全体の力を使って、鼻に入った異物を排出する動作です。ある程度、筋力があれば、それほど豪快なくしゃみをしなくても異物を出せます。筋力が不足すると、大きく息を吸って、思い切り出さないといけないのです。

 若いころより運動量が減っていれば筋力が低下するのは当たり前。ですから、気持ちよくくしゃみをするために大きな音を立てるのはよしとしましょう。ただし、ハンカチで口を押さえるとか、マナーは守ってください。

何しに来たんだっけ?自分の行動が意味不明!

A.2つのことを同時にしようとしていませんか?

 ハンカチを取りに2階に来たはずが、部屋についた途端、何しに来たか忘れてしまう。そんなとき「認知症?」と疑いたくなります。もとの場所に戻って、バッグやティッシュケースを見て「ハンカチ」と思い出せれば問題ありません。

 たいていは2階に上がるときに違うことを考えている、つまり2つのことを同時にしようとするから忘れるのです。「どの柄にしようか?」とハンカチのことだけを考えていれば忘れません。

 脳にある記憶の量は、年齢が高くなるほど増えていきます。今から許容量を増やすのは困難ですから、記憶で何とかせず、ひとつのことに集中すればいいのです。

(構成・文/鹿住真弓)

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教えてくれたのは 平松類先生
眼科専門医。医学博士。二本松眼科病院、三友堂病院に勤務。高齢者の診療経験が豊富。著書に『老化って言うな!』(PHP新書)『ガボール・アイ』(SBクリエイティブ)『老人の取扱説明書』(SB新書)など多数。健康をテーマにしたテレビ出演多数。