「岡山が生んだ奇跡のブサイク」というキャッチコピーをご存じだろうか。これはとある人気YouTuberのキャッチコピーだ。彼女の名前は「まあたそ」。「化粧したところでまったく可愛くならないYouTuber」とうたって、すっぴんからのメイク動画や変顔、身体を張ったダンスなどを投稿している。
昨今のSNS業界は芸能人が進出するほど、盛り上がりをみせている。なかでもYouTubeは料理やメイク工程、ものまねや大食い、ゲーム実況などそのジャンルは多岐にわたり、視聴者を楽しませている。そして、その最たる魅力の中に「身近さ」があるだろう。親近感こそSNSの特徴ともいえるが、その反面、誹謗(ひぼう)中傷(=アンチコメント)に傷つき、自ら命を絶ってしまう人もいることが問題視されている。
そんな中で、自身を“ブスいじり”する「まあたそ」は子育てと仕事を両立しながら、SNS世代を牽引(けんいん)し続ける。そんな彼女は、今のSNSをどう見ているのだろうか。
YouTubeをはじめたきっかけ
彼女の歴史をひも解いてみると、最初のブレイクは高校生のころだったという。Twitterですっぴんとメイク後のビフォーアフターを投稿したところ、数万リツイートされ、あっという間ににフォロワーが増えたそうだ。
「なんでもない高校生だったころにすっぴん写真がバズってびっくりしました。もともとツイキャスなどのライブ配信はしていたんですが、YouTubeを始めたのはそれからだいぶたってから。19歳で結婚して子どもが生まれて、子どもを育てながらできることは何だろうって考えました。そのとき、YouTubeが思い浮かんだんです」
SNSで自己発信が簡単になり、より「自分らしさ」や「個人力」が重視されるようになった現代。その最たる場所『YouTube』を“職場”として選んだ彼女は、YouTubeをはじめてすぐにすっぴんを公開した。自ら身体を張って笑いをとりにいくその姿は女芸人さながらだが、思春期は特に顔のコンプレックスが強かったという。最近はメイクで変わる「作れる可愛さ」も魅力のひとつとして受け入れられるが、彼女があえて「ブス」を売りに、メイクで変身していくコンテンツは時代の流れにも合っていたのだろう。
「自分でも自分がブスだとわかってて、キャッチコピーでも“奇跡のブサイク”なんて言ってるんですけど……でも自分の根底にはやっぱり“可愛くなりたい”っていう気持ちがあるからメイクしているんだと思う。コメントで《ブス!ブス!》言われて、整形してやろうか! と思ったことも何度もありますよ。いまだに自分の容姿に自信なんて全然ない」
動画をあげるたびに、賛否両論の声が並ぶ。SNSも多くの人が気軽に利用できるようになったこともあり、ときには想像できないような言葉を目にする。
「最近は特に、コメント欄でも語調の強い人が多くなってきたように感じますね。外見のことだけではなく、身に覚えがないことで傷ついたこともあります」
1件のコメントで、そのときの情緒が台無しになることを恐れ、見るときはいまだに手に汗握るという。今では傷つきながらも「言わせておけ」と思うようにしているそうだ。