女性なしでは成り立たない

 この工場見学は、30年前、岩沢さんが社長時代からずっと続けている。最近はやや減らしたが、それでも、毎土曜日に3回開催。夏休み中には毎日1日3回やるのだという。年間1万人が訪れる。

「それだけやっても6割以上断らなきゃいけなくて。来たいと思っている人に対して断るというのは申し訳ないでしょ。会社がつぶれそうになったとき、いろんな人に支えられて今があるわけでね。恩返しができたらと思ってやっているんです」

 見学の合間に社内を見ると、女性スタッフの多さに気づく。

 聞けばアルバイトを含めた従業員70人中50人が女性だという。しかも消しゴムを組み立てるのは内職の方で、近隣の約300軒に協力してもらっている。この体制は創業間もなくから始まっているそうで、女性なしでは成り立たないのがイワコーなのである。営業の福島由香さん(47)が「女の園なんです!」と言っていたが、この表現、あながち嘘ではないのだ。

営業の福島さん(左)がストップをかけている蝋で作った小鳥の試作品は、丸みを改善する予定 撮影/齋藤周造
営業の福島さん(左)がストップをかけている蝋で作った小鳥の試作品は、丸みを改善する予定 撮影/齋藤周造
【写真】岩沢さんが作った、可愛い消しゴムたち

 12月ということもあって、通路の一角におもしろ消しゴムでクリスマスの飾り付けがされていた。それを見つけた岩沢さん、作った女性スタッフを呼んでこう言った。

「これ可愛いね。可愛い人は可愛いものを作れるよね」

「やめてくださいよ~、この調子でみんなに同じこと言うんだから!」

 そう言って笑う女性に、

「思ったことしか言えないからね。明日も頑張ってね!」

 岩沢さんはこうしたねぎらいの言葉を、折に触れてよく口にするという。

「岩沢さんは、若くてきれいな女性が来るとデレデレする」、などと福島さんにイジられても、どこか楽しんでニコニコしている。

 8年前に社長を息子に譲り、役員などにはならず、一社員として毎日タイムカードを押して6時50分に出勤する。いまでも消しゴムの企画を考えるのが楽しいという岩沢さんとは、どんな人なのだろう。