全世帯からお金を借りた母

 団地の住人が話す。

「戸田さん一家は約40年前、息子さんが高校生のころにお父さん、お母さんの3人で近隣から引っ越してきました。息子さんは成人したころに独立して、30歳前後で結婚。子どもさんも生まれたようですが、20年前に離婚。九州でカメラマンをやっていたと聞いています」

 別の住人も一家の生活ぶりを覚えていた。

「お父さまは10年近く前に亡くなっていて、それからはずっとお母さまひとり。病気がちで杖もついていて、ハジメ君が大量に紙おむつを買う姿や、一緒にスーパーで買い物している姿を見かけましたよ。

 いつも黒革のコート、黒いシャツ、黒いズボンで、まるでホストみたいな感じでした。お母さまはよく“友達のところへ行ってきた”などと話していましたが、いま考えると息子さんのところへ行っていたんだと思います

 団地の住人が特に美弥子さんのことを鮮明に記憶しているのは、みなが彼女に金を貸したことがあるからだ。

 母親は同じ棟のほぼ全世帯にあたる30数世帯から金を借りていたという。

 別の棟の住人も、

「ベランダ同士で顔が合って手を振ったら、美弥子さんが金を借りに来たこともあったそうです。1回に3000円から5000円くらいですけど。なかには3万円貸したという人もいますけどね。美弥子さんは“次の年金が下りたときに返すから”が口グセ。

 貸すと何度も借りに来る。結局、返してもらっていない人もいるので、“あの人に金を貸しちゃダメ”っていうことになっています」

 戸田家を知る関係者もこうあきれる。 

「5、6年前に戸田家はある宗教団体から退会しましたが、その後も元の信者たちにも借りに来るんですよ。彼らは金銭の貸し借りは禁止されているので、断ったようですけど。

 お母さんが昔からパチンコ好きなのは知っていましたけど、何に使うのか気になっていました。収入が少なく年金暮らしでも、公営住宅の家賃は高くても月に2万円くらいです

 容疑者の父親が亡くなったときも、困窮ぶりがうかがえたという。

「葬儀は大勢呼ぶ予定だったようですが、お金で行き詰まったようで、身内だけの密葬になりました。祭壇も何もなく、お墓の場所も聞いたことがないので、お骨はそのままになっていると思います」(前出・関係者)