美空ひばりさんだろうと引き立てしない
'59年、フジテレビ開局翌日に始まったバラエティー番組『おとなの漫画』で、クレージーは初のレギュラーに。'61年にスタートした音楽バラエティー番組『シャボン玉ホリデー』(日本テレビ系)が始まると、その人気が爆発した。
犬塚が司会を務めていた歌謡番組『7時だ、とび出せ!!』に、美空ひばりさんがゲスト出演したときのこと。
「今日は特別だから、ほかの出演者もかえてくれという伝達が急に来たんです。さすがに怒りました。“オレはたいこ持ちじゃねぇぞ!!”と反発して、そのときもいつもどおり淡々とやりました」
番組の放送が終わると、ひばりさんの事務所の人がやって来て、犬塚に聞いた。
「この後お暇でしょうか?」
呼ばれた六本木の店へ行くと、ひばりさんと彼女の母親が待っていた。
「あなた、ウチのお嬢は普通の歌手とは違うのよ」
そう母親に言われた犬塚は、
「俺はゲストが偉い人でも新人でも、番組はちゃんとやる。そこに差はない」
と言い切った。すると、ひばりさん母子は「気に入った!」と言って、それから誕生日会やお祝い事には必ず呼ばれるようになった。
「行くと映画スターや巨人軍の監督とか、すごい人がたくさんいる。でも、私はお酒が飲めないし、ああいった大スターとは付き合ったことないから困りました。ただ、私はお世辞が言えないから、気に入られたのかもしれません」