森繁さんと深夜まで話をする仲に
あるとき、ひばりさんが呼んでくれたパーティーで、「ワンちゃん、ここ座って」
指さされたのは、森繁久彌さんの隣席。さすがに驚いた犬塚が断ろうとするも「いいの!」と言って、ひばりさんが強引に座らせた。すると、
「ホゥ、お嬢のボーイフレンドはワンちゃんかい」
と、森繁さんがひと言。
「参りました。でも、それから森繁さんには、息子さんたちと同じぐらい可愛がってもらいましたから、ひばりさんには感謝しています。森繁さんの奥さんの話も面白くて、ご自宅で夜中の2時まで話をしていたこともあります。家族ぐるみで私のことを信用してくれたんでしょうね」
オーラがあった芸能人として犬塚が印象深かったのは、日本映画界を代表する二枚目の時代劇スター・長谷川一夫さん。
クレージーとして時代劇の映画『銭形平次』で共演したときのこと。翌日の撮影が朝9時から開始と聞き、30分前の8時半に撮影所にやって来た犬塚たちに撮影所の門でスタッフが、
「お前たち何やってるんだ、7時には現場に入れ!」
と怒鳴った。
「時代劇はカツラも化粧もしないといけないから、現場入りが早いんです。すると、すでに銭形平次の衣装を着た長谷川さんがやって来て……」
犬塚たちが「スミマセンでした!」と謝ると、長谷川さんは「遅かったわネェ」と、優しいオネエ調の言葉がかえって怖かったという。
「話しかけられないオーラがある人でした。付き人が3人いて、イスを出す人、タバコに火をつける人とかいるんです。これぞ映画スターだと思いました。難しいセリフを一生懸命に覚えてたら“よく覚えたわネエ”と、お褒めいただきました(笑)」