販売とサービスの境界線が引きにくい
いろいろな修羅場(!?)を乗り越えてきた販売員のおふたり。販売員サイドから感じる、接客業の“今”とは──。
真澄「ここ5年くらい、百貨店に入ってくるクレームは接客についてのものが本当に多いな、と感じます」
村江「それはどんなことについて怒っているんですか?」
真澄「販売員の接客態度。アパレルのショップに入っても店員同士で話していて“いらっしゃいませ”の声がなかったとか」
村江「あ、確かにそれは気になるかもしれない(笑)」
真澄「あとは、常連のお客さまには何人も店員がついて接客しているのに、一見の自分には誰も来なかったなんてお叱りの言葉もありましたね」
村江「実際、販売員の質というものが落ちているということを感じません?」
真澄「すごく感じるし、正直そういった声を耳にする機会が増えていますね。これはどこの百貨店を見ていてもみんな同じ」
村江「お客さんが来たのに店員同士で話しているのは論外だし、いつも買っていただける常連さんを優遇する気持ちは理解できるけど……」
真澄「それを別のお客さまに悟られてはダメなんですけどね(笑)。あと、笑顔がないとかもよく言われることだけど、極端な話、買っていただくための笑顔だから(笑)」
村江「そうそう、ビジネススマイル」
真澄「買っていただけるお客さまなら、どんなお客さまでも一生懸命販売しますから。今ふと思ったんだけど、販売員はホストとそっくりだなって」
村江「お金を使ってくれるお客さんには一生懸命サービスするしね。財布のひもが固いお客さんにはそれなりに、って(笑)」
真澄「ホストって絶対に裏で“あの人はお金持っているからシャンパンお願いしても大丈夫”とか言ってますよね。“あっちはお金使いそうにないから、ヘルプに行きたくない”とか。それが表に出たら大変なことになるけど」
村江「それって今回のドコモの騒動、そのままじゃないですか」
真澄「うん。でもね、ホストクラブはモノを売るのではなく、お客さんを気持ちよくさせるというサービスの対価としてお金をもらうじゃないですか。でも、私たちの販売業って、あくまでモノを売るための接客ですよね。お客さまは同じように考えているかもしれないけれど、私の中でどこまでが販売でどこまでがサービスなのか難しいな、と感じることがあって」
村江「確かに、商品知識が豊富なことと、愛想がいいことはまったくの別物ですよね」
真澄「極端に言ってしまえば、お客さまのニーズに合わせ的確な情報提供をして、納得してもらってお買い上げいただければ問題ないと思うこともあるし。
私は販売という仕事に誇りを持ってやってきましたし、販売とは離れた部分でのサービスについて触れられると“私は販売員だから笑いません”くらいのことを言いたくなるときありますよ(笑)」