“ありがとさん”って言ってくれるだけで楽しい

 父の形見をだまし取られた京美人の志野(広末涼子)を助けるために、ふたたび一発逆転の大仕掛けを企てる小池や野田、筆跡偽造の達人・西田(木下ほうか)、表具屋のよっちゃん(坂田利夫)、材木屋(宇野祥平)たち。最後に大どんでん返しが待っている今作でも、おじさんたちのジタバタで次々に笑いが起こる。さぞや、現場でも笑顔が絶えなかったのでは?

中井そう思うでしょ。でも、現場は必死。人を泣かせるには、セリフの間が2秒でも3秒でも変わらないんです。でも、人を笑わせることにおいては、0・1秒狂うとダメ。そのくらいの間尺を常に緊張して見ていないと、笑ってもらえないんです。先輩でフリースタイルの方がいらっしゃいますが、そうすると、その方を生かすためには周りの人間が0・1秒じゃダメだ、0・08秒でと、せめぎあいをしないといけない。だから、常に現場には緊張感がある

佐々木でも、1周まわって“もうええわ”のツッコミが面白いときもありますからね。それに、現場で“ありがとさん”って言ってくれるだけで楽しいですから

中井得した気がする(笑)

佐々木名前出してないですが、完全に先輩が誰か特定されましたね(笑)

 ふたりに今年挑戦したいことを聞くと、

中井僕らの仕事って、折れ線グラフじゃなくて棒グラフなんです。毎回、毎回、0から始まる。だから、やることがすべて新しく感じてしまう

佐々木そうですよね。作品ごとに変わってきますからね

中井だって、この年でも怒られるんだよ“違いますよ!”って。俺ら、いつまで怒られるんだろう(笑)

佐々木(取材時に中井が)舞台の稽古をやってらっしゃるから、毎日ダメをもらっているんですね(笑)。“ずーっとダメや、ダメしか言うてくれへん”って気持ちわかります

美しい人の「条件」とは

 最後に、美しいと思う女性はどんな人か聞いてみたところ、

中井もうね、年齢で本当に変わりますよ。やっぱり10代、20代は、容姿というのが最優先されるけど、だんだん生きざまとか見えないものになっていく

佐々木なるほど

中井だから、言葉で表現するのがとっても難しくなっていくのかもしれないですね。昔は、こんな人がタイプって、条件を20個くらい言えたでしょ(横で佐々木が「そんなに!?」と苦笑)。でも、そういうことじゃない。女性の美しさとか、男のカッコよさって。目に見えないことのほうにリアリティーを感じるようになってくるのかもしれない

佐々木僕は、目に見えるものだったら、やっぱり笑顔かな。作り笑いはバレますけど

中井目に見えることでいうなら、よくゴハンを食べる人

佐々木それはありますね

中井美味しそうにゴハンを食べてくれる人がいちばん好きかもしれない。“わぁ~、美味しそう”ってわざとらしくなく、本気で食べてくれるのがいいですね

(左から)佐々木蔵之介、中井貴一 撮影/廣瀬靖士
(左から)佐々木蔵之介、中井貴一 撮影/廣瀬靖士
【写真】50代の渋い魅力が爆発してる中井貴一と佐々木蔵之介
嘘八百 京町ロワイヤル
1月31日より東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開/配給:ギャガ