ガイドライン作成にあたっての懸念点は、
「良心的な売主や貸主の立場で考えると、不動産の価値は下がることになるので対策が必要。不利益をこうむる方は多いとみられ、そこへの配慮が難しく、一筋縄ではいかないと思っています」(花原代表)
殺人事件のあった物件は半額になったケースも
同社が専門サイトを立ち上げたのは、事故物件を抱え困っていたオーナーから相談を受けたのがきっかけ。
物件を集められれば流通の促進につながり、結果としてマーケットができて物件の価値を高められるという狙いがあった。花原代表が続ける。
「こだわっているのは情報を正しく伝えること。取捨選択するのはお客さんです。故人のプライバシーなどには配慮しますが、起こったことは正直に話したほうがいい」
殺人事件のあった売買物件ではおよそ半額になったケースもあるといい、賃貸物件も相場より安くなっている。
さて、私たちがいま住んでいる自宅や、新年度からの転居に向け探している物件は大丈夫か。事故物件ではないと言い切るのは難しいだろう。
住宅ジャーナリストの山本久美子さんは「これから借りるなら、イヤだと思うことは質問すること」と話す。
「例えば、自殺物件がイヤならば、数字を挙げて“×年以内に自殺はありませんか”と業者に聞く。回答として『ある』『ない』のほか、『わからない』と言われることがあるので、そのときは大家さんに確認してもらいます。あとで言った、言わないのトラブルにならないように、しっかりとメモを取って残しておきましょう」(山本さん)
不誠実な不動産業者の場合、「なんでそんな質問をするんですか」とはぐらかしたり、「ないと思いますよ」と断定しないことがあるという。
「悪質な業者は、事件などが発生した後、知り合いに短期間住んでもらって“もう事故物件じゃないから”と通常の家賃で貸し出すことがある。信頼できる業者か見極めることが大事です」(同前)
“いま決めないと入居できませんよ”と煽(あお)ったり、希望条件とは異なる物件をどんどん出してくるような業者も警戒が必要。誠実な業者は冷静に判断させてくれるといい、悩んでいるポイントに寄り添って話を聞いてくれる。
「現地に行って、近所の人に話を聞くのも手。“借りようと思っているんですが、家賃が安いのは何かあったんですか”とストレートに質問をぶつけ、近くの商店主などにも話を聞くといい。地域の治安も含め、さまざまなことを聞ける情報源になります」
と山本さん。
聞きたいことは具体的に質問し、足を使って独自情報を集めることも大事なようだ。
事故物件を外見で見分けることはできないのか。
悪徳業者の手口に詳しい大阪の不動産業者は「リフォームされていると難しい」と話す。
「1年くらい空き室にしてから貸すオーナーさんもいるので、においが飛んでしまい、わからなくなる。不動産のプロでも判断がつきにくいことがあるんですよ。リノベーション(大規模改修)などで全部取り替えられるとわかりませんが、室内の一部分だけリフォームしているケースは要注意。私の経験では、室内のチェーンキーが切れている状態の部屋がありました。切らないと部屋に入れない状況があったわけで、調べると事故物件でしたね」(同・業者)
不自然にみえる点があれば質問したほうがいい。