宇野昌磨の「変化」

 一方で、この大会で完全復活を果たしたのが、新たにステファン・ランビエールをコーチに迎えた宇野昌磨だった。コーチ不在で迎えた11月のグランプリシリーズ・フランス大会では、これまでに見たことのないようなミスを連発した宇野。

 ひとり結果を待つキス・アンド・クライでは思わず涙を見せていたが、全日本選手権ではほぼノーミスの演技を披露した。大躍進の裏には、やはりともに闘う新たなコーチの存在があったのだ。

ランビエールコーチは厳しく指導するというより選手の自主性を大切にするタイプ。以前、宇野選手がランビエールコーチの合宿に参加したときは、インドアな宇野選手を積極的に外出させたり、意欲的にコミュニケーションをとっていました」(スケート連盟関係者)

 宇野はここ数年「ジャンプの技術も上げたいけれど、表現力を磨いて強みにしたい」と自らの意思を語っていた。

ランビエールコーチは、芸術性の高い演技に定評があります。宇野選手とは性格面でも相性がいいといえますが、彼が求める“表現力”の向上という面でも適任でしょう」(同・スケート連盟関係者)

 完全復活を果たした宇野に、初めて負けた羽生。勝利を貪欲に求める彼は、その悔しさから四大陸出場という“決断”を下したのだ。

もともと羽生選手は、四大陸選手権には出場する予定ではありませんでした。しかし宇野選手に敗北し、“勝利”に強いこだわりを持つ羽生選手は“このままではダメだ”と急きょ、出場することを決めたそうです」(同・スケート連盟関係者)

“忘れ物”を取り戻すために、四大陸選手権への出場を決めたのではないかという声もあった。

「四大陸選手権を優勝することで、男子では初となる“スーパースラム”達成の偉業を狙ったためではないかといわれていました。“スーパースラム”とは、ジュニアの世界選手権とグランプリファイナル、シニアの五輪と世界選手権、グランプリファイナル、そして四大陸選手権の6冠を制覇することです。

 羽生選手は五輪と世界選手権は2度、グランプリファイナルは4度の優勝経験がありますが、四大陸選手権はこれまで優勝したことがありませんでした」(前出・スポーツ紙記者)

 宇野へのリベンジ、そして誰も成し得ていない偉業の達成などメディアが注目するなか、四大陸出場前に発表した“プログラム変更”で、さらに衝撃が走る──。