『コメットさん』とレギュラーの撮影で大忙しの日々

 よき相談相手を得た九重。ソロの仕事も順調に増えてきた彼女は’67年に『コメットさん』の主演に抜擢された。

「所属事務所の社長がミュージカルスターを育てたかったみたい。『メリー・ポピンズ』や『サウンド・オブ・ミュージック』を見せられていたときに、 “宇宙から来たお手伝いさんのドラマをやるよ”と言ってね。それが『コメットさん』でした」

代表作の『コメットさん』は実写ドラマとアニメを合成するなど凝った演出が話題になった
代表作の『コメットさん』は実写ドラマとアニメを合成するなど凝った演出が話題になった
【写真】懐かしい! '67年に放送開始された『コメットさん』の九重佑三子

 九重演じるコメットさんは、故郷のベータ星でいたずらを繰り返していたために地球に追放。住み込みのお手伝いさんとして、魔法を使って奮闘するというストーリーだ。

「コメットさんは、撮影現場で子どもたちと一緒に遊びながらセリフを覚えたりして楽しかったですね。風邪をひいた子役も“コメットさんに会うんだ”って頑張ってくれたりしてね。出演するのが勲章だったんでしょうね。当時、子役だったのは林寛子ちゃんや西崎緑ちゃん、ずうとるびの新井康弘くん。みんなもういい年だけど(笑)」

 しかし、当時は3話をまとめて収録する方法がとられており、撮影は長時間だった。

「ストーリーをバラバラに撮影するから、どのシーンを演じているのかわからなくて大変でした。撮影は夜中の2時くらいまで続いて、帰って2時間しか寝れなくて。ほかにもレギュラーが3本もあったから大忙し。でも文句も考えられないほど忙しかったから、かえってよかったのかもね」

21歳で『紅白歌合戦』紅組の司会を務める

『コメットさん』が始まった年の紅白歌合戦では、紅組の司会も務めた。21歳というのは当時の最年少記録だ。

「NHKに呼ばれて話し方の勉強をしましたね。私、江戸っ子でスラスラってしゃべるから“そういう話し方は一般の方にわかりません”って言われて。ひと言ずつ標準語の勉強です。私の前はペギー葉山さんとか美空ひばりさんとか森光子さんが司会をなさっていて大変だったと聞かされていたけど、私は楽しかったです。本番の日は山本リンダさんや前田美波里さんと一緒に、ダンスの練習に参加してましたよ(笑)」

 大役を順調にこなす九重だったが、田辺との関係はスローペースだった。

私は父親が厳格で、仕事に真剣でしたから。田辺さんとはずっとよき相談相手で交際期間なんかありません(笑)。そもそも田辺さんは私に告白とかしなかったんです。私から “私のこと好きですか?”って聞くわけにもいかないじゃないですか。当時、伊東ゆかりさん・中尾ミエさん・園まりさんたち“スパーク3人娘”は田辺さんのことが好きだったみたいでしたが