息子の声ではないとバレないように、最初に“今日さ、なんだか風邪ひいて声がヘンなんだ”と言い訳するケースもあるという。
「オレオレ詐欺がなくならないのは、犯人側がこれまでの失敗から学び“こうツッコまれたら、こう説明する”と手口を常に進化させているからです」
グループで組織的に行われ、電話をかけてくる『かけ子』、お金を受け取る『受け子』、見張り役など役割が細分化されているのも近年の傾向だ。
「首謀者は海外を拠点にし、逮捕されるのは受け子など末端ばかり。だから、この詐欺はなくならないんです」
“その日に契約”は怪しい… 【悪徳リフォーム】
「最近増えているのが、地震や水害など自然災害の不安につけ込んだリフォーム詐欺。最初は“無料で家の耐震性を診断します”と親切を装って家の中を点検。その結果、“次に大きな地震がきたら、持ちこたえられないですね”などと危機感をあおり、リフォーム工事を契約させるというものです」
“大幅な値引きをします”と、すぐに見積もりを出して契約させるパターンや、口約束を交わして後日、高額な請求書を送りつけてきて“半額だけでも”と振り込みさせるケースなどがあるという。これらは実際には工事は行われず、現金をダマしとる詐欺なのだ。
一方、工事は行うものの、ずさんな施工で高額なリフォーム代を請求する、必要ないところまで修理して費用を吊り上げるといった悪徳リフォームもある。
甚大な被害をもたらす自然災害に便乗して儲けようとする、悪質極まりない詐欺だが、
「そもそも詐欺師というのは、人の弱みや不安につけ込んでくるんです。そして、表面上は親切な態度で仕掛けてくる──。だから、みなさんダマされていることに気づきにくいのです。リフォーム業者が“その日に契約”と言ってきたら、怪しいと思ってください」
ハガキが届く旧式が横行 【架空請求詐欺】
オレオレ詐欺に次いで多い振り込め詐欺が、“架空請求”。よくあるパターンが、インターネットの有料サイトやサービスの利用料など、架空の請求をメールなどで送ってくるというもの。“サイトの料金が未納です。このまま支払わないと裁判になります”といった脅し文句で、不安をあおってくる。
「最近、横行しているのがハガキで架空請求を送ってくる古典的な手口ですね」
法務省などを名乗って“あなたが利用している契約会社から民事訴訟を起こされました。連絡がない場合は給料などの差し押さえを執行します”などといった文面で、記された電話番号へと誘導する。
そこに電話してしまうと、訴訟の取り下げ費用などと称して料金を請求される。
「10年以上前に流行した手口。ですが、近年減ってきて、人々が忘れて注意しなくなったから、また復活したのかもしれません。架空請求詐欺の怖いところは、1回払ってしまうと“延滞料が発生しました”“この利用料も未払いです”と次から次へと請求されることです。詐欺の『カモ』として個人情報が出回り、別の詐欺グループから架空請求が届くこともあります」