加來教授も訴える。
「無症状者を含め、感染者数を増やさないことが大切。今は感染爆発を抑えることができるか否かの瀬戸際なのです」
また、高山医師は、クラスター(集団)にも着目。
「スーパースプレッダーとは『人』の特性ではなく『環境』の特性によるものと考えられます。そのような環境をウイルスに提供しないことが重要なんです」
スポーツジム、カラオケ、雀荘、パチンコ店なども危険エリアとして考えられる。
いちばんリスクが高い場所は病院
感染に関する人々の意識は急速に高まっている。
これまで後手後手と批判を浴びていた検査態勢も、大幅に改善された。3月6日から、新型コロナウイルスを検出するRCP検査に保険が適用されることになったのだ。
「今までは保健所の適用判断による行政検査のみでしたが、今後は医療機関の医師が必要と判断すれば、保健所を介さずに検査できるようになります」(高山医師)
とはいえ、どこの医療機関でもできるわけではない。全国844か所の『帰国者・接触者外来』を中心に都道府県が指定する医療機関のみ。高山医師が続ける。
「公費が充てられるので自己負担はありませんが、1回あたり1万8000円もする検査です。ただでさえ、ひっ迫している社会保障費ですから、必要な患者さんだけに絞られるべきです。早めに受診しても重症化を予測することはできませんし、軽症の段階から使用できる治療薬もありません」
通常の風邪の症状だけで検査を求め慌てて病院に殺到してしまえば2つの点で危険を伴う。院内感染と医療崩壊だ。
「現在の流行状態では、普通に暮らしていて感染する可能性はほとんどありません。ショッピングセンターに行こうが、ボウリングに行こうが、感染する可能性は低いでしょう」(高山医師)
と安全を強調する一方、
「今、リスクがいちばん高い場所は病院です。病院に行くと人混みに身を置くことになり、そこには新型コロナウイルスの感染者が交じっている可能性があります。ですから、現段階で最も実効性のある感染予防は『行かなくていいなら病院に行かないことです』」
と院内感染のリスクを減らすことを訴える。
加來教授が最も危惧(きぐ)することは、患者が大量に押し寄せることによる医療崩壊だ。
「検査する側は感染防護をしていますが、患者さんは検査中に咳やくしゃみが誘発されることがあります。そうなれば検査する部屋にエアロゾル(気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子)が巻き散らされてしまい、検査室そのものが危険な空間になるんです。これは医療従事者と患者の双方がリスクを負うことになります」
検査を希望する患者の中に感染者がいたら検査室から感染が広がるおそれがある。
「武漢でも患者さんが殺到したため医師が感染したり亡くなったり、看護師も逃げ出したりということがあり、医療が崩壊した事実があります。