「この役でオーディションに挑んだのは、単なる二枚目のマリウス役では面白くないと思ったから。特に思い入れがあったわけではないので、オーディションで歌詞を忘れて“ラララ~”と歌いました(笑)」
演じるなら、個性の強い役や悪役のほうが断然いい。
「いちばん苦痛だったのは『マイ・フェア・レディ』のお坊ちゃん、フレディ役(笑)。しどころがなくて、どう演じたらいいかわからなかった。それとは逆に悪い人なら、悪くやればやるほど光れるじゃないですか。だから極端な役のほうが面白いんです」
俳優廃業を止まらせた縁と出会い
アンジョルラス役を初めて演じたとき、稽古場で演出家のジョン・ケアードさんに、ずっと何ひとつ言ってもらえなかった。ダメ出しも、褒める言葉もなし。稽古の打ち上げで演出家と出演者で居酒屋に繰り出した夜、店を出るケアードさんを追って「何か言ってください」と頼んだそう。
「そのとき、ケアードさんから返ってきたのは“君は大丈夫”というひと言でした。だからアンジョルラスをやっている間は、ケアードさんに言っていただいたその言葉だけを胸のうちで信じて、ずーっとやっていたんです。演じているうちに、この役はどんどん好きになりましたね」
その後のミュージカル人生では「俳優をやめよう」と思ったことも何度かあったそうだが、運命的な縁と出会いに導かれてきた。