《東京・世田谷区》『親戚』のようなつながり目指して
「サバのみそ煮。ジャガイモとワカメのみそ汁、長いもとキュウリの即席漬けです」
キッチンで今晩の献立を教えてくれたのは母子SH『MANA HOUSE』の管理人で入居者とともにひとつ屋根の下で暮らす関野紅子(こうこ)さん。
同SHの特徴はサービスの手厚さだ。運営するシングルズキッズ株式会社の代表取締役、山中真奈さんに聞いた。
「管理人さんが常駐しており、夜も見守りをしていますので残業で帰りが遅くなっても安心です。月々の費用にプラスして毎日、保育園へのお迎えもやっています」
それに平日は毎晩、夕食が出る。子どもが成長し、居室が手狭になったため引っ越した元入居者の中にも毎晩ハウスで夕食を囲む家族がいる。
「実家みたいですよ。うちが目指すのは『親戚』みたいなゆるいつながり。親子は毎日一緒にいないといけないけど、お母さんは子どもが好きでもイライラするときもある。子どもだって親に気を遣って言えないこともある。だからガス抜きできる第三者、逃げ道になるような存在は大切です」(山中さん)
そんなつながりと安心できる住まいで、母子は心身ともに癒されていく。
「みんなつらい思いを抱えて入居しますが、日に日に元気になり、前向きになってくるのがいいです。子どもたちも成長し、変わっていく」
と関野さん。入居前後は笑顔が少ない子どもたちも徐々に笑顔が増えてくるという。
「ここなら自分の家庭環境も否定されないし、考えの押しつけもない。同じ事情を抱えているからわかり合えますし、お母さんたちも子どもが笑顔になるのがうれしい」(山中さん)
居心地のよさに、イベント参加や宿泊だけする母子世帯も少なくない。山中さんは、
「みんなが集まると年末の田舎の家みたいと言われます。まさに『親戚の家』ですね」
いつでも帰れる居場所、母子SH。各地で新たな人生の『希望』として育まれている。
《群馬・前橋市》県営住宅をリノベーション!
群馬県では行政が中心となり、県営住宅のワンフロアを母子SHとして活用する全国でも珍しい試みをスタートさせた。
担当する県生活こども部・私学・子育て支援課の担当者は、
「庁内の若手職員が立案しました。県内の子育てに関する調査で、母子世帯が抱える子育ての課題がわかり、何か支援ができないかと考えていました。同時に老朽化した県営住宅の改修が必要な時期にある中で、母子SHを提案し、今回、県営住宅の改修に合わせてワンフロアを母子SHにリノベーションしました」
各居室はもともとの住居を利用しており、間取りは1LDKと2LDKの2タイプ。キッチンと水回りも備えつけられている。広さも十分で防音やプライバシー確保にも配慮されている。
共有の広いキッチンとリビングで子どもたちものびのびと過ごせる。
家賃は収入に応じて変わるが1万6600円(プラス共用リビングの光熱費代など)からで、昨年7月から入居が始まった。県外からの応募も可能だ。担当者は、
「県でも初めての取り組みです。入居者がお互いを支え合い、一緒に生活を築いていくことを目指します。コーディネーターを交え共用部分の使い方のルールづくりや入居者の交流などを重ねていますが、まだ手探り。今後はこれをモデルにほかの市町村などへも広げていきたいです」