最新研究でわかった酪酸菌で健康長寿

 京都府立医科大学と弘前大学が共同で行った研究によると、発酵性食物繊維を多く摂取する伝統的な食事をしている地域の人には酪酸菌が多いことを報告している。この研究をリードした、京都府立医科大学の内藤裕二先生は、

「京都市と京丹後市に住む、65歳以上のそれぞれ51人の腸内細菌を調べました。すると、京丹後市のほうが酪酸菌の分類であるファーミキューテス門が10%も多いことがわかりました。さらに、京丹後市の腸内細菌のトップ4は、すべて酪酸菌でした」

 京丹後市は、玄米や海藻類、ジャガイモやサツマイモなど昔ながらの食事をしている人が多いという。食物繊維が豊富で酪酸菌を増やしやすい環境がお腹の中に整っているのだ。さらに、

「京丹後市は長寿の地域で、人口10万当たりの100歳以上の人数が全国平均の約2・8倍です。大腸がんの罹患(りかん)率も京都市に比べて低いことがわかっています」

 腸活&健康長寿には、酪酸が産生されやすい食物繊維をとることがカギに。

大腸の奥まで届き、ゆっくり発酵する食物繊維をとることが、酪酸を増やすことにつながります。酪酸菌は酸素が嫌いなので、主に大腸の奥のほうで活動しています。

 小麦ブラン(小麦ふすま)に含まれるアラビノキシランは、網のようなものに入っていて、大腸の奥のほうで網が壊れて、酪酸菌のエサになります。発酵が行われる場所も考えて食物繊維をとることが最も有効な腸活だと思います」(青江先生、以下同)

 発酵しない食物繊維もある?

「野菜に含まれるセルロースという食物繊維は、植物の細胞壁に包まれているため、ほとんど発酵しません。

 レタスなどの生野菜をたくさん食べるより、穀類でとったほうが腸活には適しています。朝食に発酵性食物繊維が入ったシリアルなどをとると、腸に刺激を与えて体内時計がリセットされるという利点もあります。発酵性食物繊維を積極的にとる生活を2週間続けると、腸内フローラが変わってきます」

 今日から発酵性食物繊維を摂取して、腸活を実感できるものに変えていこう!

京丹後市VS京都市 腸内フローラの比較 グラフィック/スヤマミヅホ
京丹後市VS京都市 腸内フローラの比較 グラフィック/スヤマミヅホ
【写真】京丹後市と京都市の腸内フローラ比較結果をグラフで確認!

(取材・文/山崎ますみ)


青江誠一郎先生 ◎大妻女子大学家政学部食物学科教授。日本食物繊維学会理事長。千葉大学大学院自然科学研究科博士課程修了。雪印乳業技術研究所を経て、2003年に大妻女子大学家政学部助教授に就任。大麦の食物繊維とメタボリックシンドローム予防に関する研究で同学会賞を受賞。

内藤裕二先生 ◎京都府立医科大学消化器内科学教室准教授。同附属病院内視鏡・超音波診療部部長。消化器病学の専門家として最先端の研究を行う傍ら、臨床の場で30年以上にわたり5万人以上を診察した経験がある。長寿腸内菌として知られるようになった「酪酸菌」研究の第一人者。