歯周病と関連深い病状
【糖尿病】
糖尿病になると免疫細胞の働きが落ち、歯周病にかかりやすくなるうえ、高血糖の影響で炎症が強まるために歯周病の症状も悪化しやすくなる。また、歯周病の炎症によって生成されるサイトカインにはインスリンの効きを阻む性質があるため、糖尿病がさらに悪化してしまうという側面も。
【胃潰瘍・胃がん】
口と胃は密接に連動しているため、口腔内の病気である歯周病は胃腸に悪影響を及ぼす。口腔内に歯周病菌が多く存在する人は、健康な人よりヘリコバクター・ピロリ菌(胃がんや胃潰瘍の原因とされる菌)や、キャンピロバクター菌(ピロリ菌の仲間)といった細菌が増えやすくなる。
【動脈硬化・心疾患】
血管壁が厚く硬くなる動脈硬化が起きると血流が悪くなり、高血圧や心疾患といった重い病気の原因となります。近年の研究で動脈硬化は歯周病菌によっても起きることが判明。実際、世界各地で心疾患の患者さんの心臓から歯周病菌が発見されたという報告がなされています。
【リウマチ】
人間の身体は異物が入ってくると、それを排除しようと免疫機能が働く。リウマチは免疫の異常などが原因で、手足の関節に痛みや腫れをともなう炎症が起きる病気。歯周病と同じサイトカインのTNFαが関連しており、リウマチ患者は歯周病にかかりやすいことがわかっている。
【アルツハイマー】
歯周病菌がアルツハイマー型認知症の患者の脳から検出された報告例があり、近年の研究では、アルツハイマー型認知症でみられる脳内老人斑(アルツハイマー型認知症の脳の組織のひとつ)の主成分「アミロイドβ」が歯周病の歯ぐきで産生されていることが明らかになっている。
【潰瘍性大腸炎】
潰瘍性大腸炎は下痢や血便、腹痛といった症状がみられ、主に大腸の粘膜が侵される疾患。原因はまだはっきりとしていないものの、腸管に免疫異常が起こり自分の腸に炎症を起こすとみられている。その炎症に深く関わっているのが歯周病にも関与するサイトカインのTNFαだ。
【PROFILE】
宮田隆先生 ◎宮田歯科医院院長。歯学博士。1977年、日本大学歯学部卒。明海大学歯学部教授、明海大学病院病院長を経てNPO法人歯科医学教育国際支援機構設立。2016年には「日本歯周病学会・学会賞」を受賞。『歯周病の本当に怖ろしいわけ』など著書多数。