「理由のひとつがブローカーとブリーダーの存在です」
そう指摘する前出・袈裟丸さんは、かつて見聞した出来事をまじえ、こう伝える。
「黒猫と黒い柴犬が流行したことがありました。一部の国で縁起がいいなどの理由から人気があり、外国人向けに売買しようと動いていた人たちがいたためです。里親募集の掲示板やSNSも黒猫ばかりにアクセスが集まったときもありました。
ブリーダーは、避妊・去勢をしていない犬猫を欲しがります。増やして売るためです。ペットショップに裏から安価で販売する人も結構いるんです。仕入れ値が安ければ儲かりますから」
ほかにも『里親詐欺』をはたらく目的として、
「不適切な目的です。要するに虐待目的ですね。SNS映えするからちょっと飼ってみたいな、という理由の人もいます」(前出・袈裟丸さん)
猫の『里親詐欺』に詳しい愛護団体関係者は、匿名を条件に取材に応じてくれた。
「同じような猫ばかりを集める転売者、動物実験で使う猫を里親サイトで探す医療関係者もいました。単身男性だと警戒されてなかなか猫を譲渡してもらえないので、知っている夫婦にお金を渡し転売してもらっていたケースもあります」
と実情を明かし、
「狙われるのがSNSや掲示板を利用する一般の方。特に自宅繁殖を繰り返す人は注意が必要。子猫は可愛いと、どんどん産ませて、すぐに里親に出す人は狙われやすい。安易に渡せば虐待されて、殺されることもあるんです」
しかし、見極めは難しい。
「実は私も里親詐欺にあったことがあるんです」
と前出の愛護団体関係者は、プロでも欺かれる現状を次のように告白する。
「(相手は)親と同居し、子どもがいるシングルマザーでした。持ち家に住んでいて、目が見えない猫を大切に飼っていました。それでだまされました。彼女はたくさん子猫を集めていたようで、定期訪問すると別の子猫が4匹いましたが、私が譲渡した子猫はみんないなくて……。
当初はゴマかしていましたが、いないことがバレたら、“脱走した”と言われました。話のつじつまが合わず、“殺しましたか?”と問い詰めたら、否定はしませんでした」
ただ、目の見えない猫は大切に飼われていたという。
「『里親詐欺』を疑われないために、先住猫を使うという巧妙な手口もあります。詐欺をはたらこうとする人たちのやり方はかなり狡猾です」
と悔しさを振り返り、
「だます人がいちばん悪いのですが、だまされた人も一生自分を責めます。一生、傷は消えません。ちゃんとした里親に引き取られたら生き残れたはずの命だったのにと自分を責めてしまいます……」
と唇を強くかみしめた。