しかもだ。小林さんが言うには、
「これまでの私たちの経験から、チャレンジネットが言う“見通し”は月収が16万円程度を想定しているようなんです。そのくらいないと、3か月でアパートを借りる初期費用は貯められない、と。しかし、ネットカフェ滞在者の平均月収は11万円ほどと聞いています。
なので、この“見通し”をかなえられる人は、ネットカフェ滞在者の中でもごくごく一部に限られています。しかも、その一部も今は仕事を失ってしまっているので」
というわけだから、どれだけの無茶ぶりだ? ということになる。
3密で2時間もの手続き
「今回、私が同行した申請者さんはこれまでネットカフェで寝泊まりしながらバイトをしてきましたが、掛け持ちしている仕事が5月から1つなくなって収入が半減するんです。『仕事がなくなって困るならと、ここを紹介されました。住むところも食べるのもままならないんで、コロナが安定するまでなんとか助けてほしいです』とお願いしても、にべもないです」(小林さん)
とにかく、東京チャレンジネットが部屋(一時住宅)を用意するまでは一旦、都が用意したビジネスホテルに滞在し、部屋が用意できたら速やかに移り、そこに3か月滞在する間にしっかり働くこと。もちろん自腹で生活費を払いつつ、礼金敷金や生活用品を購入する資金をガッチリ貯め、みごと家を借りるなどして自立していける見通しを、“希望”ではなく、具体的に立てられる人じゃないと都が用意したビジネスホテルには「入れない」の一点張りだという。
「申請者さんが『わたしのような人が断られたらどこに行けばいいんですか?』と途方に暮れて尋ねると、『コロナによって収入が減った人向けに社協(社会福祉協議会)で貸し付けをしていますから、そちらに行かれたらどうですか?』と言います」(小林さん)
たらいまわしをして、しかも借金をしろと言うのか?
「それは条件によっては減免されるものの、基本的には返さないといけないやつですよね? と私が答えました。申請者を連れてきたのは、その日に泊まるところがないので、小池知事が言っていたネットカフェ難民のために準備したビジネスホテルの窓口がここだと聞いて来たのにと言うと、『基本的には先週と先々週の土日だけ対応しただけで、毎回やってるわけではないんです』って答えられました」(小林さん)
土日の2回だけ? 形だけやりました感を出しただけ?
新型コロナによる緊急事態宣言も続き、収束はまだまだ見えない。それに伴いネットカフェを住まいにしていた人々の困窮はこれからも続いていくし、今後さらに仕事を失い、住まいも失っていく人が増えていくことは予測されるのに。それなのに「はい、もうおしまいですよ」とばかりに扉を閉じようとしてしまうのは、まったく理解ができない。
「そのときは3か月後の見通しがつきますと言わない限りが埒(らち)があかなかったので、プログラムにのることにしました。すると顔写真を撮られ、会員証が作成され、支出状況内訳書、職務経歴書、3か月分の貯金計画表、食費交通費の支出予定表など、そこから1時間45分に及び聞き取りと記入が行われました。今後、健康診断を受診したり、担当支援員による更なる聞き取りや、就労アドバイスなどが行われるとのことでした」
3密はダメと言われてるのに、2時間近くも聞き取りだなんて、そこで感染する危険も高まる。都民には人に会うな、集まるなと言っておきながら、言ってる都側がそんなことをネットカフェ難民や支援者たちに強いる現実。