協会は潤沢な資金を持っている

 今年度、協会は歴史的な“カネ不足”状態。3月場所の無観客化でチケット収入が消え、5月場所の中止でチケット収入も放映権料も入らなかった。つまり、すでに25億円ものマイナスなのだ。

「7月場所もダメになれば40億円。協会の年間収入は110億円と言われていますから、その3分の1以上が吹き飛ぶのは痛すぎる。さらに転がるように9月場所、11月場所……と、今後も中止に追い込まれかねないという焦りがあるんです」(同・部屋関係者)

 好角家で知られる漫画家のやくみつる氏は「潤沢な資金を持っているはずなのに」と、協会の対応に首を傾げる。

「これほど経営状態のいい競技団体はないでしょう。国技館を無借金で建ててしまったくらいです。いくつか場所が中止でも盤石ですよ」

 むしろ、場所開催よりも大きな課題がある、という。

「まず先に稽古の再開をどうするのか。これは国や都の対策や責任とは直接関係ない、イチ競技団体内の問題。“3密”という問題がある中、協会自らの責任でお達しを出さないといけない」(やく氏)

 1000人近い協会員の命がかかっている中で、だ。

「その線引き、そして決断は非常に難しい」(やく氏)

 これまでも「興行にこだわりすぎて、公益財団としての責任義務を果たせていない」と識者から批判されてきた日本相撲協会。今、彼らは15億円よりも、ずっと重いものを背負っている─。