「それってすごく難しいんです。番組がリアルに寄せれば寄せるほど、視聴者の声ってどうしても気になる。普通のドラマのように、完全に違う人間を演じているのなら全否定されても気にならないかもしれません。でも、“リアルな自分”に対しての批判とか評価って、受け止め方が全然違うと思います」(Bさん)
自ら望んだとはいえ、プロではない人間がイメージを作り上げられ、そのイメージが多数の憎悪を生み、憎悪によってさらにイメージを塗り固められていく─逃れられない無間地獄。Bさんの言葉に、木村さんがのみ込まれてしまった恋愛リアリティーショーの闇が見え隠れする。
出演に際してBさんには出演料も支払われた。収録1回ごとに計算され、放送期間で彼女が手にしたのは50万円ほど。
『テラハ』制作過程で、木村さんはじめ出演者に対するスタッフからの演出の強要があったのか。フジテレビに尋ねた。
「撮影の都合で場所や時間について出演者と事前に協議したり意思をヒアリングすることはありますが、出演者の意思や感情にそわない演出をして撮影をすることはありません」(企業広報室)
リアリティーショーは“諸刃の剣”
メディア論の研究者でテレビ番組制作にも携わっていた同志社女子大学の影山貴彦教授は、安易な恋愛リアリティーショー作りに警鐘を鳴らす。
「他人の喜怒哀楽をのぞき見するような快感を、低コストで視聴者に提供できるリアリティーショーは魅力的なコンテンツです。でも、その出演者は、ほぼ素人。それを踏まえた見せ方が制作サイドには欠かせません。そういった意味でリアリティーショーはテレビ局にとって“諸刃の剣”なのですが、その意識が希薄になりつつある」
フジテレビは5月29日、社長名で番組制作に問題がなかったか改めて検証を行うと発表。だが、木村さんの笑顔はもう戻らないのだ。