個性豊かなイケメンたちが繰り広げる、思わずキュンとくるシチュエーション、ストレートなセリフが視聴者の心をわしづかみ。タイだけでなく、全世界でハマる人が急増中。そんな『タイBLドラマ』の魅力に迫る。
「俳優がみんな可愛くて、お話もキュンキュンします!」
甘酸っぱいBLにキュンキュン
タイBLドラマ歴2年の淑子さん(仮名・30代会社員)は多くの画像とともにそう記者に力説した。淑子さんのイチオシ作品は『SOTUS』。伝説とも言われるヒット作で、現在でも人気が高い。
“BL”とは“ボーイズ・ラブ”の略で、男性同士の恋愛を描いた小説や漫画のこと。タイには1990年代にBL小説やBL漫画が輸出され、現在では同国のオリジナル作品も数多く出版されている。
アジアのBL事情について取材を続ける朝日新聞の守真弓記者によると、
「タイでは5年ほど前からBLドラマが放映されるようになり、若い女性を中心に絶大な人気があります。その人気はタイ国内だけでなく、アジア各地に広がっています」
日本でも男性同士の恋愛をテーマにした『おっさんずラブ』('18年)が一大ブームを巻き起こした。“タイBLドラマ”はそれに次ぐ旋風を巻き起こしつつある。
「新型コロナウイルスのステイホームでたまったストレスを忘れたい、そんな心理にスッとハマったのでは」
と福島大学の前川直哉特任准教授(ジェンダー研究)は分析する。
BL事情に詳しいジェンダー研究者の堀あきこさんは、
「『2gether』という作品が起爆剤になったと思います。“タイドラマを見る”というのはハードルが高いですよね。でも、SNSで作品の画像が流れてきて、“このカッコいい2人は誰?”と興味を持ち、アクセスした人も多かったのではないでしょうか」
ではなぜ、タイBLドラマが私たちの心をつかむのか。第一はクオリティーの高さ。
「現在、タイ国内では年間20本近くの作品が作られており、内容も急速に洗練されています」(前出・守記者)
毎シーズン何作品か放送、配信されており、BLはもはや特殊な設定ではない。そのため質が問われるという。
次に感情を揺さぶる演技力とストレートなセリフ。
ブログ『タイドラマファン』でタイBLドラマの魅力を発信するbebeさんは、
「少女マンガから出てきた王子様みたいな男の子たちが演じているのがとてもいい。相手を好きな気持ちをストレートな言葉で伝えているので、すごくキュンとします!」
俳優陣の多くは10代後半から20代前半のほぼ新人だが、徹底した演技指導でそれを感じさせない。高い演技力が視聴者を引き込むカギとなる。
そして作品の選択肢が豊富なこと。甘酸っぱい青春純愛、不器用な片思い、ドキドキする濃厚ラブシーン。俳優陣のルックスもさまざま、好みの作品がきっと見つかる。
主人公たちを囲むサブキャラクターたちも立役者だ。複数の恋愛模様が同時に展開されることも。堀さんが解説。
「主人公たちの恋愛を邪魔したり、応援したり、周囲の設定も作り込まれているので作品に説得力があります」