コロナ禍に乗じた使い捨てが横行
労働トラブルに悩んでいる人の駆け込み寺として機能しているNPO法人『労働相談カフェ東京』の横川高幸理事長は、
「もともとの生活ベースが厳しい方にとっては、今回のコロナ騒動は致命的な出来事だと思います」
と指摘し、コロナだから解雇もしかたないんだ、という従業員の生活を守る意識の低い経営者による安易な解雇の風潮に釘を刺す。
「シフト制で働いているがシフトを入れず『雇い止め』にして解雇という責任を曖昧にするケースが増えています。
さらに正社員のシングルマザーも追い込まれています。子どもが休校になり面倒をみることになると“君には仕事を任せられない”というケースがありました。
こういう場合は、『小学校休業等対応助成金』(子どもの世話を行うことが必要になった労働者に有休を与えると、事業者が助成金を受ける対象になる制度)があり、事業者は助成を受けられますが、手続きが面倒でやりたがらない。このシングルマザーは申請をしてもらえませんでした」
5月中旬、飲食店の事務の仕事を即時解雇になったという20代のシングルマザー・田所美佐子さん(仮名)は、会社の対応に怒り心頭だ。
「緊急事態宣言が解除になってもお店を開けるかどうかわからない、急きょ人員を減らす、という説明でした。その後の保障は何もありません」
と政府が設定した生活を支えるための支援を活用することさえもしなかったという。
コロナ禍に乗じた使い捨てに田所さんは、
「私と同時期にパートの妊婦の方も解雇になりました。もうすぐ産休に入るというので、切りやすいと解雇になったんです。弱い立場の人を標的にしていることに本当に腹が立ちます」
現在、田所さんは新たなパートの仕事を見つけ、シール張りの内職と兼業で子どもを支えている。