致死率はほぼ100%の『狂犬病』

 先月、国内14年ぶりとなる狂犬病の発症者が、愛知県豊橋市で確認されたことは記憶に新しいだろう。発症者はフィリピンから来日し、渡航前に同国で犬に噛まれて感染したとみられている。

狂犬病の症状が出たら治療薬はなく、致死率はほぼ100%

 全身の脱力感や頭痛などに始まり、その後、麻痺まひ、精神錯乱などの症状に至る。致死率がほぼ100%と聞くと暗たんとした気持ちになるが、狂犬病流行国に渡航する前に、ワクチン接種をしておけば最大の予防となる。しかし、打ったから大丈夫というわけではなく、

噛まれた後もワクチンを打つ必要がある。打ち続けることで効果があります」というように、放置は厳禁なのだ。

狂犬に足を噛まれるとウイルスは神経を伝わって脳へ行きますが、ウイルスの増殖は遅く、脳への到達期間は1~3か月とされており、脳へ行くまでの間に身体の免疫を強化するために、噛まれたら早急に追加のワクチンを打つことが肝要

 とはいえ、普通の観光客が狂犬のたむろしている場所へ行くことはないでしょう。現地に長期間滞在し、かつ感染を受けるリスクのある人は予防ワクチンを接種しておく必要があります」

 また、狂犬病になった人がほかの人を噛むわけではないため、人から人への感染はないとも

狂犬病以外で、動物から人間が感染する場合には、一般的に動物のウイルスが糞尿ふんにょうに出て、それが乾燥してほこりが舞い上がり、そのほこりを人が吸って発症するわけです。感染した人の糞尿にウイルスは出るのですが、トイレが整備されている衛生環境の国では人から人への感染は起こらないのです」

 蚊を媒介して感染するデング熱やジカ熱に関しては、日本の家では夏、網戸がありクーラーを使うため蚊に刺されにくいので、熱帯でデング熱に感染した人が帰国しても、その人を蚊が刺して、さらに多数の人にウイルスを広げることはない。

 2014年の東京・代々木公園でデング熱が広がったのは、そこで蚊帳をつらないで野宿した人がいたためと考えられている

「清潔な衛生環境でも人から人にうつる感染症は、性感染症のエイズや飛沫伝播(ひまつでんぱのインフルエンザなどただし、これらはコンドームやマスクで遮断することができます

 コロナで得た理解や知見を活かしていくことが、ほかの感染症対策においても役に立つのだ。

「“こういったことが役に立っていたんだな”ということを頭の片隅に入れておけば、慌てないですむと思います」

 どんな感染症に対しても過度に恐れないため、正しい理解が必要というわけ。“相手”をよく知ることこそ備えとなり、余計な憂いを減少させるのだ