知らず知らずのうちに他者にうつる『梅毒』
2014年から急激な増加傾向にある梅毒。2017年には、年間報告数が44年ぶりに5000例を超え、東京、大阪、愛知という都市部での報告例が目立っている。梅毒の感染経路は、口腔性交、肛門性交などを含む性行為。
感染すると1~3か月ほどで、感染部位(主に局部)にしこりを感じるようになる。この症状の段階であればペニシリンを打つだけで寛解する。しかし、初期症状に気づきづらく、知らず知らずのうちに他者にうつしてしまうので厄介。
また、コロナ禍に中国・雲南省で男性が、ネズミを媒介とする『ハンタウイルス』に感染し、「また中国から新たなウイルス流行が!?」と話題になったが、人から人へは簡単に感染しない。
「感染するとウイルスは尿に出てきます。トイレで用を足す限り、他者が排泄物が混ざった塵やほこりを吸い込むことはないですから、日本で流行することはないでしょう」(井上先生)
罹患すると重い肺炎から呼吸困難に陥り、致死率は40~50%。ワクチンはないという。そして途上国へ行く人はA型肝炎に注意、と井上先生。
「日本では衛生状態の悪かった1960年以前に生まれた人は免疫を持っています。当時、水道水や川、海水にもこのウイルスが存在していたので生まれてすぐに感染しても症状は出ず、強い免疫が作られました。しかし水道水の塩素消毒が普及し、日本からA型肝炎ウイルスは消滅。なので、60歳以下の人たちは免疫を持っていません」
予防法としては現地で絶対に生水を飲まないこと。長期滞在の場合は、出発前にワクチンを受けることだ。
(取材・文/我妻アヅ子)