目次
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ー 本当に必要なのは公立の小学校
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ー 生理が原因で40日も欠席するという数字が
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ー 生理用品には誰でもアクセスできることが大事
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ー 日本のジェンダーギャップ指数は146か国中118位

 市役所のトイレに生理用品を置いてほしいとSNSに投稿し、いい歳をしてなぜ非常用ナプキンを持ち歩かないのか、などとネット上で非難された三重県議がいる。このほど殺害予告メールを受け取り、被害届を提出し受理された。県議の真意はどこにあったのだろうか。この問題の根っこにあるのは「生理の貧困」だという。生理の貧困に取り組む人々に話を聞いた。

本当に必要なのは公立の小学校

 最近耳にすることが増えた「生理の貧困」。経済的な理由などから、生理用品を入手することが困難な状態や、生理についての正しい知識の欠如を指しており、女性の心身への深刻な影響が問題視されている。

 ドラマ『御上先生』(TBS系)が、この生理の貧困に正面から切り込み、SNS上でも大きな反響を呼んだ。両親を亡くし、祖父母と暮らす女子高生が介護と貧困に苦しみ、生理用品を万引きするというエピソードが描かれた。今どきの生理事情はどうなっているのだろうか。

 京都府内を中心に、生理用品の配布活動や生理に関する正しい知識の発信を行うNPO法人『お客様がいらっしゃいました.』の代表・河野有里子さんは語る。

コロナ禍で生理の貧困が注目され始めたころ、学生の2割が生理用品を買うのに苦労しており、また4分の1が代用品を使ったことがある、という事実を知ったのが活動のきっかけでした。女性の生きづらさを少しでも軽くするため、自分でも何かできるのではないかと。自分も女性ですから、生理用品がないことがどれだけ大変なのかはよくわかります

 2021年から活動を始めた。団体名の“お客様”とは、月に1~2度やってくる生理のことを指している。

 当初、コロナ禍で親の仕送りや自分のバイト代が減ったことで影響を受けた学生を“生理の貧困”当事者として考えていたが、活動を続けるうちに見えてきたのは、幅広い世代が当事者であったことだ。

「ハローワークや専門学校などにも告知チラシを置いて、地区センターなどで配布を行うのですが、取りに来られる方の年齢層は20代から50代と幅広く、平均は41歳。私たちは大学生を想定していたので驚きました。配布会では生理用品だけでなく生活用品も配布しているので、相談を受けることも。

 支援への喜びからメンバーの前で涙された方もいたのが印象的でした。ピルについての相談を受けましたが、医療的なアドバイスはできないので、自分の経験からピルや漢方薬についての話をしたところ、数か月後の配布会で“自分に合う薬を見つけられた”と報告いただき、うれしかったです

性教育の出前授業を行うNPO法人『お客様がいらっしゃいました.』副代表の仲川さん
性教育の出前授業を行うNPO法人『お客様がいらっしゃいました.』副代表の仲川さん

 生理は隠すものではない。見える形でやりたいと思って始めた配布会だが「取りに行くのが恥ずかしい」「困っていると思われるのが嫌」などの声を受け、郵送での配布も始めた。高校や大学、女性支援施設に広報しているが、年に1~2回最大40個の発送の枠はすぐに埋まり、その大半が若い世代だという。

「生理の貧困は、生理用品が買えないという経済的なものだけではありません。必要な知識を得ていないことも生理の貧困のひとつです。私たちは小学生を対象とした性教育の出前授業を子ども食堂などで行っています。

 ボディクリームを経血に見立て実感してもらうなどしています。いちばん大事な時期に必要な知識にアクセスできないのは問題。生理用品の無料設置も私立校が多いですが、本当に必要なのは公立の小学校。生理の貧困は格差の問題とも無関係ではありません