「だまされた! あいつが養育費をちゃんと払うって言うから、最後はしょうがなく別れてやったのに……。養育費を途中で減らされるってわかっていたら、離婚してあげなかったんだからね! もう、どうしてくれるのよ!!」
つぼみはありったけの恨み節を並べたのですが、つぼみは康生と楓さんの再婚を阻止すべく離婚を拒み続けていました。そのため、当時の康生はつぼみを金で釣るしかありませんでした。仕方なく「養育費はキミの言い値でいいから」と投げかけ、つぼみが「それなら(毎月)9万円で」と答え、康生が承諾したという流れ。彼女に家庭を壊されたと、つぼみは今でも根に持っているため、今回の件についても露骨に抵抗したのです。なるべく元夫や楓さんを困らせようと。
養育費の見直しは法律的に根拠がある
しかし、お金の名目が養育費の場合、事情変更(離婚時と比べ、経済状況や家族構成等が変わった場合)を理由に見直すことが法律で認められています(民法880条)。コロナによる収入減は上記の事情変更に該当するでしょうから、離婚の経緯はどうあれ、楓さんの言い分に法律的な根拠があるのは間違いありません。
確かにつぼみは望まざる離婚の代償として十分すぎる金額の養育費を約束させることに成功したのですが、実現したのは一括の現金ではなく、分割の約束に過ぎません。上記の条文があるのだから、残念ですが、最終回まで全額もらい続けることが保証されているわけではありません。たとえ、「彼女と一緒になりたい」という身勝手な理由で康生が離婚を突きつけてきたとしても。つぼみの個人的な意見と法律の公式的な見解、どちらが優先するのかは言わずもがなです。
「離婚したら私たちが再婚するって分かっていたでしょ? 再婚したら長女も養わないといけないし、子どもができるかもしれない。(毎月)9万円の養育費は最初だけで、あとで減らされるってわかって離婚に応じたんじゃないですか?」
と楓さんは反論したのですが、それでも、つぼみはまだ食い下がってきたようで……。
「はぁ? 何言っているの! そっちの子より、こっちの子を優先するのは当然でしょ? あんたたちの子のために、こっちの養育費を減らされるなんて納得がいかない!」
つぼみはまるで「自分さえよければそれでいい」という態度をとったのですが、楓さんは彼女の傍若無人さにカチンときたそう。しかし、大きなため息と同時に深呼吸をし、息を整えながら、つぼみを諭し始めたのです。
まず「子どもは親を選んで産まれてくることができません」と前置きした上で、
「私は罪を犯しました。何を言われても仕方がないと思っています。でも子どもに罪はないんじゃないでしょうか? 次女があなたに何かをしましたか? 何もしていませんよね。それなのに次女のミルクやオムツ、離乳食のお金が足りなくなるのはおかしいじゃないですか? たまたま私たちのところに産まれてきたせいで不幸になるなんて……」
と楓さんは涙ながらに訴えかけたのです。