前妻への養育費は毎月2万9000円が妥当
再婚や養子縁組、子の誕生など複雑な事情を抱えるステップファミリー。養育費をどのように計算すればいいのでしょうか。具体的には家庭裁判所が公表している「新しい算定方式」(判例タイムズ1111号291頁)を使うのですが、昨年12月に公表された平成30年度司法研究により用いる数字が変わりました。
(1)算定方式に当てはめて基礎年収(年収のおよそ0.4倍)を算出します。
(2)大人の生活費を100として、14歳以下の子どもは62、15歳以上の子どもは85と指数が定められています。これを用いて、前妻の子÷(夫+次女+前妻の子)の係数を算出します。夫の基礎年収に係数を掛けると「前妻の子の生活費」になります。
(3)前妻の子の生活費×{夫の基礎年収÷(夫の基礎年収+前妻の基礎年収)}が妥当な養育費の金額です。
現在の状況ですが、康生は3~6月の月収が12月まで続いた場合、年収は400万円程度。一見、康生だけでなく楓さんの収入も、つぼみの子の養育費に影響しそうですが、上記の計算式に楓さんの年収を当てはめる欄はありません。そして計算式の中に大人(100)が登場するのは康生の扶養に入っている場合です。楓さんは康生の扶養に入っていません。同じく長女は給料を受け取っていないものの、会社に籍を置いているので、やはり康生の扶養に入っていません。
計算式にはつぼみの基礎年収が必要ですが、つぼみの激怒ぶりを考えると、楓さんが彼女から現在の収入を聞き出すのは無理があります。離婚当時、つぼみはパートタイマーだったので仮に100万円以下とします。
このことを踏まえた上でつぼみの子の養育費を計算すると、毎月2万9000円が妥当な金額であることが分かりました。楓さんの家計の赤字は毎月5万円。養育費が毎月9万円から4万円へ下がれば赤字を解消することができます。つまり、楓さんが求めている毎月5万円の減額(9万円から4万円へ)は養育費の相場を考えれば、つぼみにとって恵まれた数字なのです。
しかし、つぼみは憤ります。
「私がどんだけ苦労したか……本当にわかっているの? あんたは何にもせずにいい身分ね! 偉そうなことは働いてから言いなさいよ!!」