イケメンがイケメンとして輝いていた'90年代
男性陣はというと、個性豊かなイケメン俳優たちがこぞって現れ、ドラマ界を盛り上げた。
「“東ラブ”の織田裕二は三谷幸喜さんがゴールデンで初めて連ドラを書いた'93年の『振り返れば奴がいる』で新境地を開拓し、'97年には『踊る大捜査線』の青島という当たり役を手に入れた。“東ラブ”でライバル役だった江口洋介は『ひとつ屋根の下』のあんちゃんでブレイクし、'99年には『救命病棟24時』がスタート……と作品を通して役者が育っていってる。極めつきが『あすなろ白書』のバックハグで世の女性の心をわしづかみにした木村拓哉です」
彼のブレイクをきっかけにジャニーズがどんどんドラマに進出するようになったのもこのころから。一方で、竹野内豊を代表とするモデル系の役者も増えた。
「キャラクターに関しては、今ほど思い悩んだりはせず、イケメンがきちんとイケメンとして輝いていた。それを最も感じるのが反町隆史と竹野内豊がW主演した『ビーチボーイズ』です。何が起こるわけでもなくイケメンふたりが海辺で戯れているだけで癒される(笑)。脚本の岡田惠和さんの絶妙な掛け合いが生み出す空気感が最高でした。私、『ビーチボーイズ』はそのときどきのイケメンを使って、毎年リメークすればいいと思ってるんですよ。例えば吉沢亮と山崎賢人で『ビーチボーイズ2020』とかどうです?(笑)」
そんな'90年代ドラマを支えていたのが、野島伸司、北川悦吏子、三谷幸喜、岡田惠和、君塚良一といった脚本家たちだ。今のドラマは原作ものが主流だが、当時はほとんどが脚本家のオリジナル。原作がないから視聴者は先の展開に純粋に一喜一憂できた。中でも圧倒的だったのが、野島伸司のストーリーテリングだ。
「フジでやるときは『ひとつ屋根の下』など明るくコミカル、TBSでは『高校教師』のようにブラックな野島ワールドと書き分けていたのも印象的でした。『古畑任三郎』の三谷さん、『踊る大捜査線』の君塚さんなど違うジャンルの方がドラマに新風を吹き込んでいくというトレンドも'90年代から生まれたもの。
彼らの作品はいま見てもきちっと作り込んでいるなと感心してしまいます。若く才能ある脚本家とフレッシュな役者が新しいドラマを作っていこうというプロデューサーと一緒に種をまき、ドラマというジャンルを花開かせていった。'90年代はそんな幸福な時代でしたね」