新型コロナウイルス後を見越して、テレビ局が“大物切り”に舵をきり始めた。
「コロナでどうしようもないんだ、ということにすれば、言い訳もとおりやすい。あとは、番組をつぶすのではなく、番組を合体させたり、放送時間帯を移動させるなどすれば、出演者は無抵抗で受け入れるしかない」
スポーツ紙放送担当記者はそう話し、右手でさっと首を斬る仕草をする。
帯番組の司会者は狙われやすい
フジテレビ系『直撃LIVEグッディ!』が9月いっぱいで放送を終了し、直前に放送されている昼の情報番組『バイキング』に吸収合併されることが明らかになるやいなや、今度はテレビ朝日でも動きがあった。
『サンデーステーション』が日曜午後4時30分から午後9時の枠に移動することが明らかになり、それにともないテレビ朝日の報道番組に約14年間出演し続けた長野智子キャスター(57)が“卒業という名のクビ”になることになったのだ。
コロナ禍の4月・5月、在宅率の高さから民放テレビ局は高視聴率を弾き出したが、
「それとは正反対に、CM収入は、従来の6割程度にまで落ち込んでしまった。フジテレビの遠藤龍之介社長は会見で、リーマンショックや東日本大震災直後よりも影響が大きい、と受け止めていた。ほかの局も、同様の認識ですよ」(前出・スポーツ紙放送担当記者)
コロナ以前から、テレビ局の広告収入は、インターネット広告や若者のテレビ離れなどの環境の変化があり、左肩下がりの傾向にあった。映画や美術展などのイベント開催、ゴールデンウイークや夏のイベント、音楽フェスなどの放送外収入で補っていたが、どれもこれもコロナ禍で当てが外れてしまった。
「テレビ番組の製作費と人件費に手を付けるのは簡単だが、製作費を削れば番組の質に直結する。局員の給料、番組製作スタッフの人件費も、ここ数年、手を突っ込んできた。残りは出演者のギャラになる。特にギャラが高く、余人をもって代えがたくない人がまず狙われる。フジテレビは安藤優子、テレビ朝日は長野智子のフリーキャスタ―に引導を渡したわけですが、安藤の代わりは坂上忍が務め、長野の代わりは局アナが務める。テレビ局としては純粋に固定費が削れるというわけです。特に帯番組の司会者は、もっとも狙われやすい存在だと思いますよ」(制作会社プロデューサー)
加藤浩次、宮根誠司、小倉智昭、設楽統ら、毎日、露出している司会者を、コロナショックが襲わないとは、誰にも断言できないご時世だ。
タレントを支えるテレビ局だって安泰ではいられない。
「万が一にでも来年の東京オリンピックが中止になれば、民放キー局5局体制だって、当たり前じゃなくなる。生き残るためには、視聴率で上位2位以内に入っていないと厳しい、と常日頃から断言している若手執行役員が各局で力を伸ばしています。今の経営陣ではどうしようもなくなったときに、テレビ業界には第2波、第3波、第4波のコロナショックが襲いますよ」(前出・スポーツ紙放送担当記者)
〈取材・文/薮入うらら〉