「隣の座席との間隔は空いていると言っても1席分程度で、片手を伸ばせば届くくらいでした。前後の間隔は1列分も空いていなかったから、かなり近かったですね……」(観劇した女性)
なぜクラスターが起きたのか
6月30日から7月5日にかけて上演された舞台『THE★JINRO イケメン人狼アイドルは誰だ!!』で、出演者や制作関係者、そして観客らが新型コロナウイルスに集団感染した。
「主演は山本裕典さんで、そのほかの出演者は世間的にはあまり認知されていない、いくつかの若手アイドルグループのメンバーが出演していました。舞台ではありますが、人気の『人狼ゲーム』を用いたアイドルイベント的な要素が強い作品でしたね」(演劇ライター)
はじめに、出演者の1人である7人組ダンスヴォーカルユニット『Super Break Dawn』のTAKUYAの感染が発覚。その後、全出演者とスタッフがPCR検査を受け、7月16日までに主演の山本ら出演者・スタッフ・観客の計77人の感染がわかっている。約800人という観客全員も“濃厚接触者”に指定され、不安な日々を過ごしているという。
国立感染症研究所感染症疫学センターによると、濃厚接触者の定義の1つに以下のようなものがある(国立感染症研究所ホームページ内「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領」より抜粋)。
●その他: 手で触れることの出来る距離(目安として1メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と15分以上の接触があった者(周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する)。
※「患者(確定例)」とは、「臨床的特徴等から新型コロナウイルス感染症が疑われ、かつ、検査により新型コロナウイルス感染症と診断された者」を指す。
冒頭の女性が言うように座席間隔は狭く、公演時間は15分をゆうに超える。上記の定義にぴったりと当てはまる公演であった。
「劇場となったシアターモリエールは通常は186席。今回は政府のガイドラインに合わせて、100席弱に減らして上演されたようです。同劇場も加盟する『小劇場協議会』は、コロナウイルス対策について、“劇場の責任”として小劇場協議会が作成したガイドラインに沿って、“劇場ごとに”独自のガイドラインの作成を求めています。
ガイドラインには入退場の注意や密にならない工夫などが示されていますが、劇場の規模や立地、作りによって当然それらは変わってくるわけです。換気をできる窓があるかどうかでも変わってきますからね。
シアターモリエールは、ガイドラインの作成が本公演に間に合わなかったため、小劇場協議会のガイドラインで公演しました。強行とも言えますし、休演の考えが出なかったのか疑問ですね」(前出・演劇ライター)