有名な温泉町が騒然としたのは昨年11月のこと。群馬県草津町の新井祥子町議が、電子書籍などで「2015年に町長室で肉体関係を強要された」と黒岩信忠町長を突然告発したからだ。町長は「全部つくり話」と激怒し、逆に新井氏を名誉毀損で刑事・民事の両方で訴えたのだが、騒動はいま、沸騰点を迎えていて─。
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取材場所に現れた新井氏は少し疲れているように見えた。
「議会で発言すると、町長が“ウソばかり”と突っ込んできて、まともな政策論議ができないんです。ようやく議員活動が再開できたと思ったら今度は議員辞職勧告されるし、居心地がいいとは言えませんが、告発は自分で決めたことなので覚悟しています」
と胸の内を明かす。
告発直後、個人間の問題を議場に持ち込んだことが「議会の品位を傷つける破廉恥な言動」だとして懲罰動議が可決され除名処分に。新井氏は「町長は公人で町長室は公共施設」と県に処分の執行停止を申し立て、2月にひとまず復職を果たした。処分の妥当性を判断する自治紛争処理委員の審決はコロナ禍で遅れており、身分がはっきりするまで時間がかかる見通し。
必ず法的にシロ・クロつける
それでも新井氏は、
「ウソをついているのは町長。5年前は事件をもみ消されると思って泣き寝入りしましたが、裁判ですべてを明らかにしていきます」
と決意は揺るがない。
一方、黒岩町長は名誉毀損容疑で新井氏と電子書籍の著者を刑事告訴するとともに、新井氏ら3人を相手取り「回復困難な人格権侵害を被った」として慰謝料計約4400万円などを求める民事裁判を起こした。
黒岩町長に進展を尋ねると、
「コロナ禍で刑事事件の捜査も民事裁判の審理も遅れています。でも、必ず法的にシロ・クロをつけます。新井氏と男女の関係を持つことはありえない。誤解されるような行為もしていません。
つまり、私か彼女のどちらかがウソをついているということ。言っていることに自信があるならば私を強制わいせつで刑事告訴すればいい。しかし、彼女はそうしようとしないんです」
と、込み上げる怒りを抑えきれない様子だった。