ともあれ突如、林葉さんは将棋連盟に休養願を提出した。あのスター棋士が。あのアイドル棋士が。いったい何があったんだ。将棋の申し子、棋界の女流の星がそんな追い詰められるなんて、よっぽどのことに違いない。
そして休養だけでも世間の人は大いに驚いたのに、彼女は「失踪」してしまうのだ。その直前に会った将棋界の人たちは、精神的に疲れているから休みたいとのことだった、といったふうに彼女をかばい、言葉を濁した。
この辺りのことも、なんとなくテレビや週刊誌で見た記憶がある。まぁ、いろいろあるでしょうよとしか部外者には思えなかったが、突如として彼女の師匠である米長邦雄氏が、
「インドのサイババに会いに行くといっていた」
などといい出した。世間も意表を突かれたが、もともとオカルト好き、神秘世界に興味津々の私も、これには食いついた。
インド失踪騒動の真相
いろいろな奇跡を起こせるというインドの聖者は、当時の日本でもかなり知られる存在となっていた。関連本なども売れ、さまざまな著名人もあれは本物と絶賛していた。
インドの聖者か。なんか林葉さんらしいなぁ、私は林葉さんについて表面的なことしか知らないのに妙な納得をし、初めて彼女になんだか強い共感を持ってしまった。
確かにそのときの彼女の行動は、将棋界や世間からは褒められたことではないにしても、自身がお姫様でいられる場所を放って、目的のために軽々といろんな境界線を越えていく。
やはり、この人は謎だ。
当時はインターネットなどなかったので、林葉さんの動向はテレビや週刊誌を見るしかない。実はサイババにも会う気はないしインドにも行ってないし、ちょっと噂された男性とも結婚はしないし、実はヨーロッパに渡っていた、等々。
だが、彼女に言わせれば真相はこうだ。
「師匠には、インドに行く、なんてひと言も言っていないのに。なんであんなこと言ったんでしょうね(笑)。あと、ぜんぜん知らない芸人さんに、『ドバイで見かけた』と言われてたし。
あの当時、私はきちんとタイトルを返上してから休養願を出して、ロンドンに行っていたんです。いきなりいなくなった、連絡がとれないとされていてびっくりでした。海外だから、当時連絡がとりづらかったのは当たり前だと思うんだけど(笑)。
帰国して、将棋連盟側に記者会見をセッティングされました。もう納得がいかなくてね。で、記者会見が始まる30分くらい前に連盟の職員から、師匠からの白い紙を渡されたんですけど。開いたら“立場をわきまえたら悪いようにはしない”とあって。だから会見のときは、怒りがピーク状態だったんです」
彼女はついに将棋連盟に退会届を出し、天才棋士は元棋士となる。しかし、これ以上のびっくり仰天な出来事が世間ををざわつかせる。いきなりの、ヘアヌード写真集。