また、きょうだいコンプレックスのなかには、男女間の格差を感じさせるケースもある。実際、
「弟のほうが、男であることを理由に進学などで優遇されていた」(50代女性)
「親の関心も入学祝いの品物も、長男である兄と妹の私では全然違った」(40代女性)
といった女性たちの非難の声が聞こえてくる。
碓井さんが言う。
「特に地方では、男の子──それも長男は家の跡継ぎという感覚が強いため、別格扱いをされることがあります。大昔はそれがよしとされてきましたが、今はそんな時代でもありません。“なぜ長男ばかり”と不満がたまり、ほかのきょうだいたちとの軋轢のもとになっています」
武田鉄矢が苦悩した
エリート兄との確執
そもそも、きょうだいコンプレックスの根本には「親からの愛情の奪い合い」があると碓井さんは指摘する。
「特に、いちばん上の子どもは、親にとって初めての子育てなので神経質に育てられがちな反面、たっぷりと愛情も手間もかけてもらえる。ちょっとしたことができただけで喜ばれ、期待もされます。ところが次の子が生まれると、これまでひとり占めできていた親の愛情を突然、奪われた感覚になってしまいます。
しかし、下の子にしてみれば反対に、上の子のほうがかわいがられているように見えるもの。上の子の写真のほうが多かったり、自分の洋服やおもちゃは“お下がり”ばかりだったり……」
生まれた順番で親の接し方が異なり、それを子どもが愛情の格差と感じるのは珍しいことではない。問題は、「きょうだいに対する親の愛情に、本当に偏りがある」場合だ。
俳優・武田鉄矢(71)は親の愛情格差から生じた兄との確執を著書につづっている。5人きょうだいの次男で末っ子だった武田は、12歳上の兄に長年、コンプレックスを抱いてきた。有名大学を出てエリートコースを歩むこの兄を母親は溺愛していたという。
《母親は兄を誇りに思っていて、いつも兄貴ばかりかわいがっていて……僕は自分のことも見てほしいって思ってました》と、幼少期の苦悩を雑誌で明かしている。自身がフォークシンガーとして成功したことをきっかけに、兄との立場が逆転したものの、兄が亡くなる寸前まで、わだかまりは解けなかったそうだ。
「武田さんの場合、優秀だったお兄さんに母親の愛情が注がれていましたが、優秀だから愛されるパターンばかりではありません。言うことを聞かない、手のかかる子どもをよりかわいいと思う親もいるからです」(碓井さん)
外で活発に遊ぶ子どもと、家でピアノを弾く子どもの、どちらを「いい子」ととらえるかは親によって違う。
「優秀だから愛されるのであれば、子どもは頑張ればいいでしょうが、逆となれば努力のしようがない。余計にこじれて心のしこりになります」