何か言い訳をしないと助けてもらえない
厚生労働省によると、マタニティマークの目的は『妊産婦が交通機関等を利用する際に身につけ、周囲が妊産婦への配慮を示しやすくするもの』。外出先で体調を崩したとき、会話ができなくても周囲に対して、妊娠中ということを伝えるなどの役割も担う。
マークをつけることで「席をかわってもらった」など気にかけ、いざというときにフォローしてくれる人がいる一方で、“舌打ちされた”“暴言を吐かれる”といったことも日常茶飯事。
「“妊婦は場所を取るから電車に乗るな”と言われた人もいるようです」(境野さん)
子どもの安全な移動を考えるパートナーズ代表の平本沙織さんは、
「マークをつけて優先席に座っていると“妊娠は病気じゃないから席を譲りなさい”とか、“若いのに”とか言われたという話もよく聞きます」
「後ろから突き飛ばされた」「お腹を叩かれた」など暴力を受けた人もいる。
事件の背景を平本さんは、
「マタニティマークや妊娠・子育て中の女性に対する社会の理解はまだまだ足りない」と訴える。
もちろんマークをつけていても最優先されることが保証されているわけではない。
「マークはあくまでも周囲の思いやりや理解、助けになる目印。ですが、マークに限らず、何か言い訳をしないと助けてもらえない。そんな雰囲気が社会に広がっているように思います」(前出・平本さん)
例えば、つわりがひどく席を譲ってもらいたいときには『つわりが重いんですマーク』をつけるなど、周囲に体調の説明をしなければかわってもらえない、なんて状況にだってなりかねない。
前出の境野さんは、事件で受けた恐怖からマークを一時的にはずしたという。