2014年、記者会見界に訪れた“素人の乱”
'00年代に起きた、雪印乳業の集団食中毒事件での「寝てないんだよ!」という社長の逆切れ会見('00年)や、高級料亭「船場吉兆」による食品偽装等の謝罪会見('07年)で飛び出した「ささやき(女将)」を見ても明らかなように、誠意なき会見に対して、世の中は拒否反応を示すようになった。
そんな中、金屏風の前で離婚発表をした泰葉×春風亭小朝の記者会見('07年)は、“時代の残り香”とでも言うべき、風化させたくない名記者会見だ。円満離婚を強調するも、後日、ブログで小朝を『金髪豚野郎』と罵る──、今なお場外乱闘をし続け、“海老名家健在”を結果的にアピールするあたり、さすがは伝統を重んじる一家である。
「『あの日の自分に声をかけるなら?』という質問に『出かけるのはおやめなさいと言いたい』と語り、失笑を招いた11代目市川海老蔵暴行事件の会見('10年)、片岡愛之助&藤原紀香の結婚会見('16年)、6代目三遊亭円楽の不倫謝罪会見('16年)など伝統芸能系は、今でもきちんと会見を開く傾向が強い。
円楽師匠の『今回の騒動とかけまして、いま東京湾を出ていった船と解きます。(その心は)“後悔”の真っ最中』といった大喜利のような会見は絶賛された。きちんと対応できる人は、記者会見を開いたほうがいいということを示した」(前出・渡邉さん)
裏を返せば、対応するスキルがない場合は、表に出てこないほうが賢明とも。
くしくも、芸能人のブログやSNSが定着化した'10年代は、ライフイベントの発表をネット上で行うことも珍しくなくなった。
その影響からか、発表性に乏しくなった芸能人の代わりに、素人たちの記者会見が目立ち始める。新垣隆、佐村河内守、小保方晴子、野々村竜太郎といった芸能人以外の人たちが、立て続けに世をにぎわせた2014年は、記者会見における“素人の乱”といえよう。
また、印象に残るような芸能人の会見が少なくなった理由として、「昨今は“お辞儀は〇秒”“決められたスーツを着る”など、『こうすれば世間は納得する』といったマニュアルどおりの謝罪会見が目立ちます。そつなくこなしているように映り、どの会見も似たり寄ったりになる」と、窪田さんは指摘。
芸能事務所が、十把一絡げの危機管理をタレントにしいることで、イメージの回復はおろか、事態の深刻化を招くという。その人“らしさ”を無視した会見は、逆効果というわけだ。