2003年に北米でリリースされた『千と千尋の神隠し』のDVDで、ラセターは冒頭に登場し、「みなさんはラッキーです」という言葉で映画の紹介を始めている。続けて、彼は「これは今までに彼(宮崎駿)が作った中でも最高作だと思います」と述べた。
ラセターはまた、2014年に宮崎駿監督がアメリカ映画芸術科学アカデミーから黒澤明以来の名誉賞を受けた授賞式でも舞台に立ち、およそ6分にわたってその功績を称えている。
そのスピーチでラセターは、宮崎氏の作品を初めて見たのは『ルパン三世 カリオストロの城』で1981年のことだったと明かした。当時、ラセターは大学を卒業し、ディズニーで働いていたのだが、「その頃は、ディズニーですら、アニメは子どもだけに向けたものと認識するようになっており、失望していた」と振り返っている。そんな折にこの作品を見て、大きな希望を得たというのだ。
「あの映画は、冒険、ハート、ユーモアに満ちていました。さらに、人間の行動のディテール描写がすばらしいのです。あまりに好きだったので、前の日に出会ったばかりだった妻にも見せました」と、ラセターは語る。
彼はまた、そのスピーチの中で「(宮崎駿監督の映画は)感情が豊かで、技術的にも非常に優れており、観客を目覚めさせます。それは、自然の美しさかもしれないし、自分の才能を他人のために生かそうということかもしれません」「映画というものが世の中に存在するかぎり、人は彼の作品を愛し、鑑賞し続けることでしょう」とも述べた。
アカデミーからも絶大の信頼を集める
ところで、アカデミーといえば、当然のことながら宮崎監督は何度も会員に招待されているにもかかわらず、その都度断っている。大きな栄誉には飛びつくのが普通なのだろうが、彼には彼なりの価値観と信条があるということだ。
それなのにアカデミーが名誉賞を与えたというのも、アカデミーが彼に寄せる愛と敬意の大きさの証拠だ。宮崎監督もこの栄誉は素直に受け入れ、授賞式にも出席している。