ボロボロになるまで頑張る

 ただ、2年後の7月、同じ東京ドームで行なわれた日米野球第2戦では、彼の将来を不安視する声も耳にした。試合のあと、近くの店で食事をしていると、隣りのテーブルに有名な野球ライターたちのグループがいて「斎藤は年々、悪くなっている」などと話していたのだ。同じことを感じていたので、プロ入り後の成績についても、まぁこんなものかなという気がしている。

 ちなみに、プロ10年目の斎藤は現時点で15勝26敗。とはいえ、観客動員やグッズの売り上げなど、営業面ではかなり貢献してきた。昨年の結婚もニュースになったし、ある意味、成績だけでは評価できないところもある。それゆえ、日本ハムも彼を大事にしてきたのだろう。

 しかし、このままでは戦力外宣告、つまりクビになる可能性もある。『東京スポーツ』が以前、そのあたりについて質問すると、彼はこう答えたという。

「もしそうなった場合でも、ひとりの野球人としてボロボロになるまで野球を続けたいです。(海外球団でも)もちろん、どこでもオファーがある限り」

 ハンカチの「ボロボロ」と身体の「ボロボロ」を掛けたわけでもないだろうが、野球への情熱がしっかりと伝わってくる。また、13年前に出版された『佑樹 家族がつづった物語』(小学館)のなかで、彼はこんな将来像を語っていた。

「夢は大きく」ということでやってきたんで、メジャーリーグは目標にしているところではあるんです。でも、それは“日本のエース”になってからですね

 かつてハンカチ世代と呼ばれた同期生には、田中将大前田健太のようにこの目標を実現した選手もいる。このまま二軍の中継ぎで終わるわけにはいかない、というのが本音だろう。

 ボロボロになっても投げ続けるハンカチ王子。その爽やかさだけではない、泥くさくもある野球人生をこれからも見届けたい。

PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。