そればかりではない。こうした外的要因が追い風になったことは否めない事実だが、KFC自身の企業努力によって、「実力」で売り上げを伸ばした面も見逃せない。
大型連休には大人数向けのセット商品「GWパック」を投入。家族で映画鑑賞をしながら、手で持って食べられることをアピールしたCMを、テレビやSNS、動画投稿サイトなどで一斉に訴求。少しでも自粛ムードを打ち消したい、消費者の本能に訴えかけた。
一見地味だが、臨機応変な対応も、功を奏している。利用が急増したドライブスルーに対しては、最需要期のクリスマスにしか配置しない警備員を急きょ手当て。車列を誘導してスムーズに流れるようにし、客の回転率をアップさせたという。
居酒屋やファミリーレストランなど多くの外食企業が不振を極める中、KFCも商業施設内の店舗を中心に一時は150店舗を臨時休業したうえ、全店原則としてイートインでの客席利用を中止して20時には営業を終了。感染対策のため多くの制約を受けた。だがそうした逆風をはねのけ、全店売上高は4月が20.6%増、5月が22.2%増となるなど、前年同月比で大きく売り上げを伸ばしたというわけだ。
会社は過去最高益予想だが、それでも保守的
KFCの場合、今期がスタートした時点では「新型コロナウイルスの影響により算出が困難」として、通期の業績予想を未定としていた。それが8月7日の第1四半期決算とともに通期予想も同時に発表。売上高は850億円(前期比6.7%増)、営業利益50億円(前期比4.5%増)で、本業である営業利益は上場来最高(16カ月決算だった2010年3月期を除く)を予想している。
とはいえ会社予想は保守的だ。コロナ禍の第二波がピークを打ちつつある今、4月や5月のような売り上げ2割増のペースを期末まで続けるのは、さすがに難しいかもしれない。それでも、前期に47.8億円の営業利益を稼いでいることを考えると、たった2.2億円の小幅な増益とするシナリオは、いささか慎重視しているだろう。
確かに新規出店で戦線を拡大する際、店舗設備の初期費用や従業員の採用費などの負担は大きく、利益に貢献するまでには時間がかかる。しかし、KFCの新規出店は少なく、既存店の成長が業績を牽引している状態にあるため、売上高が伸びると、それに比例し利益も増えやすい構造なのだ。
最近では、ネットで事前注文して店舗で受け取るだけの客や、ウーバーイーツや出前館の配達員が受け取りに来ることも多い。まだ大半の店舗では、注文したその場で商品の提供を待つ形式のため、ランチタイムなどにはしばしば長い行列が発生してしまっている。
こうした課題を解消すべく、今期はカウンターの注文場所と受け取り場所を分ける改装を推進する。直近では改装費用がかさむものの、将来に向けた投資ともいえ、年度後半にかけて業績にプラスに作用してきそうだ。