ちなみに、最初の妻もアイドルデュオ・キララとウララの大谷香奈子だし、華原と破局後、再婚した妻は自らプロデュースしたAsami。3度目の妻は一緒にglobeをやってきたKEIKOである。
こうした生き方ができたのは、彼が音楽面だけでなく、容姿的にも経済的にもイケていたからだ。篠原はブレイク前、東京パフォーマンスドールのメンバーだったが、その公演を小室はお忍びで見に行っていた。いわゆるオタク然とはしていない美青年の出現に、メンバーたちは「いったい、誰がお目当てなんだろ、って盛り上がってた」(篠原)という。
そんな小室も、61歳。王子様というより、おじいさまでもおかしくない年齢だ。秋元の要求で7回書き直したという今回の復帰作も、懐メロ感が漂う。「WOW」が連呼されるサビなど、いかにも'90年代のJポップで、そんな小室っぽさがわかりやすいほうが話題になると秋元は踏んだのだろう。
なお、乃木坂のセンター・齋藤飛鳥は「もともと小室さんのファンだった」としたうえで、
「楽曲も“小室さん感”があふれていて、個人的に本当にうれしかったです」
とコメント。ただ、齋藤が生まれたのは小室が失速しつつあった'98年なので、いささかリップサービスっぽい。老いたベテランをいたわっているようでもある。
とはいえ、男としての欲求が枯れたかのようなことまで言っていた人が精気を取り戻し、引退も撤回したのだ。
このうえは、彼なりの余生を楽しんでほしい。王子様だったことを知らない少女たちにとっては、アイドル好きのおじいさまにしか見えないとしても──。
PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。