そもそもなぜ彼らは、お笑い界という浮き沈みが激しい中、『しくじり先生』で高木が語っていたように、最高月収が180万円になるような活躍ができたのだろうか。その理由は彼らの最大の特徴でもある、あの「脱力系ラップ」の面白さではないか。
なぜ「脱力系ラップ」が面白いのか
彼らのネタである、あのゆるいラップ。“韻を踏む”ことは昔から変わりないが、実は面白さはそれだけではない。まず、彼らのラップネタの一部を振り返り、“笑える秘密”を紐解いてみよう。
「お祝いしましょう〜浜省は冷え性♪ なななな〜なななな〜なななな軟骨〜♪ いきなり出てきてごメ〜ン♪ 誠にすいまメ~ン♪」
「友達以上恋人未満~モーガンフリーマン♪ なななな〜なななな〜週7木の実ナナ〜♪」
「ジャムおじさん~破産♪ あき竹城~異常♪」
“キモ可愛い”と称される高木がリズムに乗りながらこういったフレーズを投げかけ、反復横跳びのような動きで登場。少し間を開けて池谷が「なんだこいつ〜〜〜!」と困惑した表情を見せる。
韻を踏んでいるところもあるが、「お祝いしましょう」と「浜省は冷え性」、「友達以上恋人未満」と「モーガンフリーマン」というワードの間に関連性は全くない。
さらにネタを見ての通り、ジョイマンはよく著名人の名前を使う。しかも、浜省(=浜田省吾)やモーガンフリーマン、ジャムおじさんなど、芸能界もしくは世間的知名度の高い名前をあえて使用。その割に、「あき竹城〜異常♪」を見ると、「正常」でもいいところを敢えて「異常」というワードを使うなど、対象の人物に若干失礼なラップが多い。
だが、なぜか冷え性で凍えている浜省や、アンパンマンの顔を変えすぎてパン工場の経営難で破産してしまったジャムおじさんの姿が想像できてしまう。中には「若林、孤独死♪」「大和田獏、自爆♪」といった不謹慎なフレーズもあるのだが、視聴者の想像力をうまく使ったラップネタは、ほかのリズムネタとは違う「一拍おいた笑い」を提供している。
彼らのネタを何となく聴いているだけでは、いくらでも作れそうな気がしてしまうが、絶妙に笑える要素を入れたラップに仕上げるのは難しい。関連性のない言葉を使って規則性のあるラップを完成させ、聴いた人の想像力を駆り立てる。数多く存在するリズムネタの中でも、ジョイマンのネタは自家発電的にじわじわと面白くなる新しい笑いのスタイルだったといえるだろう。
どこか毎日ピリピリとしているコロナ禍の今、嫌なことを忘れられるほど笑えて、なおかつ癒されるジョイマンのような笑いが求められているのかもしれない。