元夫は大学の学費を出さないと豪語していましたが、本当にそうなのでしょうか? なぜなら、彼が「東大の特待生しか認めない!」と吐き捨てたのは奈美さんの前だけです。息子さんに直接、言ったわけではありません。父子家庭でも予備校で勉強し、志望校を受験し、見事に合格する。そんな誇らしく微笑ましい姿を目にしますが、息子さんの努力を無駄にすることができるほど、夫は悪人ではないはず。そして法律的にいえば、親権者である元夫は大学の学費を負担しなければなりません。

 元夫の個人的な意見と、法律の公式的な見解とどちらが優先するのかは言うまでもないでしょう。「東大以外の大学でも、学費を出してくれるのではないでしょうか?」と筆者は奈美さんを勇気づけました。

長男が自立するまで数年の辛抱

「来年、息子は受験です。大学に入って下宿すれば、私は家政婦はやめるつもりです」

 奈美さんは力強く言いますが、家事から解放されるのは早ければ1年後。息子さんが自宅から大学へ通った場合でも、浪人、留年せずに卒業した場合、就職するのは5年後です。息子さんは社会人になっても親のスネをかじる坊やではないでしょうから、遅くとも5年後には自由の身です。

 もちろん、息子さんが元夫と喧嘩をし、自ら家を出て行ったり、彼に追い出されたりして奈美さんのところへ転がり込む場合はその限りではありません。何しろ元夫との関係を断つ目途が立ったことで、奈美さんは肩の荷が降りた気分だと言います。息子さんのためとはいえ家に出入りするので、元夫との接点を完全に断つことは難しいです。実際のところ、離婚1か月目から元夫が攻撃を開始。

 例えば、ゴミ出し。奈美さんの地域では燃えるゴミの収集は週に2回。たまたまゴミ出しを忘れてしまい、ゴミ袋を台所に置いたままにしたところ、元夫からメールが。「お前、バカだろ? 何年、主婦をやっているんだよ? 生ゴミが臭うし、ふざけるな!」と。そのゴミ袋は3日後の次の回収日に出せばいいのに、ひどい言われようです。

 それ以外にも風呂に入浴剤を用意したり、リビングテーブルに生花を飾ったりしたところ、彼は「ムダづかいだ。お前が勝手にやったことだろ? 頼んだ覚えはない!」と言い、奈美さんが差し出したレシートにバツ印をつけ、そのぶんの清算を拒んだり。挙句の果てには「いくら稼いでいるんだ! 稼ぎが増えたら8万円は減らせよな!」とメールを送り付けてきたり。

「妻に逃げられた」現実を目の当りにすれば、少しは改心しそうなものですが、元夫は相変わらずという感じ。しかし、息子さんが自立すれば正式に縁が切れるのでもう少しの辛抱です。


露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)
1980年12月24日生まれ。國學院大學法学部卒。行政書士、ファイナンシャルプランナー。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化して、行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界で最大規模に成長させる。新聞やウェブメディアで執筆多数。著書に『男の離婚ケイカク クソ嫁からは逃げたもん勝ち なる早で! ! ! ! ! 慰謝料・親権・養育費・財産分与・不倫・調停』(主婦と生活社)など。
公式サイト http://www.tuyuki-office.jp/