無理して、いま死ななくていいじゃない
収束が見えないコロナに対する不安や恐怖。外出自粛によるストレスや孤独感。不況による企業の倒産や解雇。若者や女性の自殺者が増えた要因のひとつに、非正規雇用が多いことも関係していると、前出の前田室長は危惧する。
それは著名人も同様だ。
「映画やドラマの撮影ができない。テレビ出演も減り、家に閉じこもりがちになります。おまけに仕事が減れば、ギャラだって減ってきます」
ネット上での匿名の誹謗中傷も追い打ちをかける。芸能人は評価をどうしても気にせざるをえない職業。普段は忙しくて見ないネットの書き込みもコロナ禍で時間があり、見てしまった人もいたのではないだろうか──。
「根も葉もない誹謗中傷もたくさんありますが、気にするなと言っても気になるもの。罵詈雑言を浴び、身に覚えのないことを言われたら誰だってつらくなります」
前田室長は訴える。
「死ななくてもいい方法はいくらでもあります。なんとか思いとどまり、相談してください。オンラインでもいいです。必ず話してください」
いのちの電話だけでなく相談先は複数ある。例えばNPO法人ライフリンクはウェブサイト内で支援先を紹介する『いのちと暮らしの相談ナビ※』を展開している。
希林さんは講演の最後にはこう締めくくっていた。
《自殺するより、もうちょっとだけ待っていてほしいの。そして、世の中をこう、じっと見ててほしいのね。あなたを必要としてくれる人や物が見つかるから。だって、世の中に必要のない人間なんていないんだから。〈中略〉私みたいに歳をとれば、ガンとか脳卒中とか、死ぬ理由はいっぱいあるから。無理して、いま死ななくていいじゃない。
だからさ、それまでずっと居てよ。フラフラとさ》
希林さんの願いがひとりでも多くの人に届いてほしい。
※NPO法人ライフリンク「いのちと暮らしの相談ナビ」http://lifelink-db.org/
心理相談室サウダージ http://www.saudade.biz