10年ぶりの乳がん検診で、左乳房に2つのがんが見つかった。そのとき、麻倉未稀の頭に真っ先に浮かんだのは「歌えなくなったら」という不安。歌を優先しながら、持ち前のポジティブさで、手術も治療も笑顔で乗り越えてきた。(以下、麻倉さんのコメント)

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この乳がんにもきっと意味がある

 乳がんが見つかったのは3年前。テレビ番組の企画でした。それが5年ぶりの人間ドックで、乳がん検診は10年ぶり(笑)。でも、無関心だったわけではないの。実は40代のころに『乳血栓』という症状があり、がんを疑って、乳腺外科を受診していたんです。

 当時、先生から「念のために3か月ごとの検査を3年間続けましょう」と言われ、きちんと守っていました。でもこの3年間、がんの兆候は見られなかったんです。だから、どこかで安心していたのかな。でも10年ぶりの検診で、実は当時すでに、がんが存在していたとわかったんです。でも私はマンモグラフィーに映りにくいタイプの『高濃度乳房』だったから、判断が難しかったのね。乳がんと判明したときは、乳頭の裏にある10年前のがんと、新しい2つのがんが、左乳房に混在している状態でした。

 先生から「悪性です」と宣告されたとき、もちろんショックでした。病院を出て、自宅のある神奈川県藤沢市に帰るために電車に揺られながら「どうして私が」と、いろんな思いがかけめぐりました。

 でも「『ヒーロー』を歌ってる私が、しっかりしないでどうする!」っていう気持ちになったんです。これまでも何度も「歌に励まされています」と、ご病気の方からメッセージをいただいたことがありました。この乳がんにもきっと何か意味がある。公表しようと決めました。

 夫の前では泣いてしまいましたが、自分の切り替えの早さにはびっくり(笑)。仕事の予定と相談しつつ、てきぱきと手術日を決めました。