兼近とも奇妙な縁があり……

 事件当時、多くの友人や関係者は、北見のそばから離れていった。同時に噂やウソがひとり歩きすることもあった。

僕が無免許運転をして捕まった、悪いことをした、というのは事実ですし罪は罪。みんな離れていくのも当然だし、情報としてそうなっているのであればしかたないと思うようにはしていたんです……。信頼していた後輩や仲よくしていた人が事実と違う噂やウソをホントのことのように話していたり。それもひっくるめてネットでニュースになるんです。つらかったです。身から出た錆なんですけど

 事務所に“逮捕されたことを報告していなかった”とも報じられていたが、実は、「事務所に“まったく伝えていなかった”わけでもなくて……。そういうことが積み重なると、誰を信じていいのかわからなくなって、生きるのもしんどくなって……

 '16年5月のある日、北見は“自殺未遂”を起こした。

恵比寿にあるビルの5階から飛び降りたんです。股関節を骨折して額と上あごがザックリ切れてケガだらけにはなったんですけど、奇跡的に助かって。その後、神奈川県の横須賀刑務所に入りました。でも、刑務所にいる間に父が亡くなってしまったんです。最期に立ち会えなかった

 北見の父は県立高校の校長まで務めた厳格な人物。「芸人になる」と言った北見に、当初は猛反対。その父から刑務所にいる北見あてに毎週のように手紙が届いた。

“もう1度、芸人をやってほしい”“続けてほしい”って……。母も……父が亡くなってすぐ、あとを追うように……親不幸したままで……

 言葉を詰まらせる北見の目には涙が浮かんでいた。

 りんたろー。とのつながりも消えなかった。騒動後も“新たにコンビを組む”というときにも連絡が来た。

りんたろー。の今の相方の兼近くんとはほぼ面識がないんですが、昔、僕がテレビ局のイベントで『ミストマン』というキャラになって“毎日水をひたすらまく”という仕事をいただいたことがあって。その初代ミストマンが僕で、翌年の2代目が兼近くん。何か“縁があったんだな”って」

“チャラ男”漫才を引き継いで大ブレイクを果たした彼らをどう感じているのか尋ねると、

「先にそのスタイルで売れたのはEXITですから。りんたろー。たちの漫才を見て思ったのは悔しさより“見つけたな”っていううれしさというか。新しい相方も見つけたし“チャラ男”というジャンルを突き詰めて新しいお笑いのポジションも見つけて。“ベイビーギャングで目指していた漫才が間違ってなかった”とも思いましたし、何より、迷惑をかけたりんたろー。が路頭に迷わなかったっていうのは本当にホッとして……」

 りんたろー。とは、EXITが大ブレイクしてから1度、ふたりきりで会ったという。

会ったのはあの件以来です。改めて“悪かった”って謝りました。それで“かならず俺も追いつくから先に行って待っててくれよ”って。今の僕には彼の背中なんて全然見えてないですけどね(苦笑)

 北見は、お笑いの道を再びしっかりと歩き出した。